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薔薇のスタビスキー

じゃむとまるこ

4.0

ネタバレ人生は芝居のように

アラン・レネ監督作「ミュリエル」「メロ」「去年マリエンバートで」に続き四作目の鑑賞です。 非常に作家性の強い方で、好き嫌いははっきりと分かれるんじゃないでしょうか。 「ミュルエル」のレビューでレネ監督は地味と書きましたが、心理劇ですので、地味といえばそうなんですが、ゴージャスな地味、なんのこっちゃ、ですが、これほど格調高くゴージャスな映画はそう多くないと思います。 フランスで実際にあった疑獄事件を基に、かなり忠実に再現されていますので、登場人物が多くまたレネの特徴として、過去と現在の交錯が目まぐるしく解り辛い仕組みになっています。 1933年スペイン国境の小都市バイヨンヌ市立信用金庫の倒産から発生した疑獄事件は一大スキャンダルとなり当時の左派政権は内閣総辞職にまで追い込まれました。 フランス国籍も持たず、過去の詐欺事件で長期保釈中の身でありながら、劇場主、新聞社主、馬主であり、数々の裏事業で得た巨額の金を政財界にばらまき、時の権力との交際を深め、虚飾の生活を続けるが、当然ながらそんな生活は長く続くはずもなく、事件発覚後スタビスキーはパリを脱出、スイス国境シャモニーにある知人の別荘に逃れるが警察に踏み込まれ頭に銃弾を受けて倒れているのを発見される。 公式には自殺と発表されるが、大半の新聞は権力による口封じであるとの見方を示していた。 という事件ですが、映画は時の左派政権がレオン・トロツキーの亡命を受け入れるところから始まり、スタビスキーの劇場での女優オーディションの場面・・・ここで応募者の若い女性が「私はユダヤ人でドイツから逃れてきた、ユダヤに誇りを持っている」といったところでスタブスキーの表情が一瞬曇ります、彼はユダヤ系ロシア人なのですが、それを隠していました・・・キャンブルに湯水のごとくお金を浪費するシーン、政府要人への巨額の賄賂、を事業として当たり前と思っているらしい場面などで彼の特殊な性格もわかってきます。 コンプレックス、虚言壁、誇大妄想、こういった事件を起こす人物にありがちな性格ですが、この同じ年にドイツではヒトラーが首相になっています。 よく似た人格の持ち主だと思いました、時代の変換機にはこういった人物が現れやすいのでしょう。 そして、ラスト近くにはスキャンダルにより崩壊した左派政権に代わり右派政権となり トロツキーはパリを追われることになります。 ざっとこういう仕組みの映画ですが、本作はJ・P・ベルモンドのセルジュ・アレクサンドル・スタビスキーを演じたいとの尽力で映画化されたようですが、ベルモンドというとゴダールという感じで、これが適役だったかどうか、何とも言えないのですが、多少胡散臭さの漂う人物、憎み切れない面を持ち、洒落たスーツを着こなし、胸ポケットには赤い薔薇の花・・・似合っていたように思えました。 アラン・レネの美意識は本物で、スタビスキーの定住するクラリッジホテルのアールヌーボー様式の外観、内装、インテリアとも実に魅力的で、また、妻アルレットを演じるアニー・デュプレーは、アール・デコの絵画から抜け出てきたような美しさです。 スタビスキー、太く、短く生きた、幻の48年。妻アルレットは口封じのため刑務所に収監されましたが、出所することがあったのでしょうか。 原題は「スタビスキー」ですが“薔薇の”と付け加えるだけで、映画は全然違った印象になります。 はたして彼は実在したのだろうか、夢のまた夢ではなかろうかというアラン・レネ独特の 雰囲気が魅力的です。 ジェラール・ドパルデューが、ほんのちょい役で出演していますが、やはり光るものがありました。

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