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巴里の女性

巴里の女性

A WOMAN OF PARIS

81

bakeneko

5.0

ネタバレ鮮烈な美しさ!

精緻で冷徹な人間観察と見事な語り口からなるドラマを通して“人生の美しさの真実”を描いた埋もれた大傑作であります。 チャップリンが唯一出演していない監督映画として有名な本作は、彼のファンでも観ている人が少ない映画でもあります(“そんな奴はファンじゃない!”と知人は憤慨するのですが)。 時期的には「キッド」と「黄金狂時代」の間で、「給料日」「偽牧師」と同時期に当たりますが、8巻を超える上映時間は彼としても初めての異例の長編だったのであります。 そして、予てから純粋にドラマチックなものの本質を究めてみたかった(そして徐々に“単純なスラップスティック喜劇”から、独自の“ペーソスを含んだ悲喜劇”へと移行していた)彼は、観客をミスリードする可能性のあるコメディ記号としての自分を廃した本作で、思う存分“純粋な人間ドラマ”を追求しています(そうは言っても、全編を通して映画&ドラマ的娯楽性はしっかり維持されていますので、普通に楽しめる作品なのですが)。 見事に緊張感と劇空間を維持する演出は、美しい画面と相まって映画の醍醐味を味あわせてくれますし、後付けの音楽(例によって彼自身の作)の叙情性も素晴らしく映像とシンクロしています。 そして観客は、エドナ・パーヴィアンス、アドルフ・マンジューらの名演と的確な演出とショットに唸らされながら、鮮やかなラストショットに至福の美しさを観るのであります。 数年前のパブリックドメインとしての版権解釈裁判で、チャップリンの作品は“まだパブリックドメイン期限が来ていない”と逆転解釈され、それまで500円で本屋に並んでいた彼の作品の“廉価版”は軒並み(回収はされないものの)製作中止(=現商品が売り切れたら補充なし)状態になりました(普通の値段ではもちろん手に入りますが)。 で、「黄金狂時代」や「モダンタイムス」等が早々に品切れとなったのですが、この映画は2009年現在も500円版がしっかり売れ残っています(この不人気さ!良いんだか悪いんだか)。 御試しに如何?

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