ここから本文です

パリは燃えているか (1966)

PARIS BRULE-T-IL?/IS PARIS BURNING?

監督
ルネ・クレマン
  • みたいムービー 56
  • みたログ 233

4.28 / 評価:68件

狂気を凌駕する理性の物語

1966年の『パリは燃えているか』は、「太陽がいっぱい」の巨匠ルネ・クレマンが監督した超大作だ。1944年8月の第二次世界大戦末期、ナチスドイツからのパリ解放を描いている。フランス・アメリカ合作で、共同脚本としてフランシス・フォード・コッポラが名を連ねている。
当時の記録映像が多く使われており、映像記録としても貴重である。私が思い浮かべたのは、ドラクロワの描いた名画「民衆を導く自由の女神」だ。この絵はフランス革命を題材にしているが、映画で多くの市民たちが銃を手に立ち上がる場面と重なるものがあった。芸術と歴史遺産の都であるパリは、同時に「革命」の似合う街でもあるのだろう。パリを上空から捉えたエンドロールのみカラーになり、時代が戦後に移り変わったことを示している。

製作当時は終戦から20年ちょっとしか経っておらず、当時をリアルに経験した人々も多かった。画面から市民の熱気が感じられるのはそのためだろう。戦闘シーンだけではなく、市街戦のさなかで営業している街角のカフェや、普通に犬を連れて散歩する紳士、紅茶を飲みながら銃撃戦を見物する老婦人など、非常時の中で日常を続ける市民の描写が心に残る。これもまた一つの抵抗精神なのだ。

映画の主題は「パリの爆破計画はいかに回避されたか?」である。冒頭にアドルフ・ヒトラーが登場し、パリ占領の指揮官となったコステリッツ将軍(ゲルト・フレーベ)に、撤退する時はパリを焦土にせよという命令を下す。そこでタイトルが出て、重厚なテーマ曲とともに風前の灯となったパリの風景が映し出される。素晴らしいオープニングである。
主人公をひとり挙げるなら、このコステリッツ将軍になるだろう。演じるゲルト・フレーベは、「007/ゴールドフィンガー」などで映画ファンにおなじみだ。当時のナチスドイツは、スターリングラード攻防戦をきっかけにノルマンディー上陸作戦など敗北が続き、コステリッツ自身はドイツの敗戦を悟っていた。彼の決断がパリの運命を大きく変えることになる。

ドイツ軍は命令通り、エッフェル塔などの文化遺産や主要な橋、地下水道などパリの至る所に爆弾をしかけていた。「パリの爆破によってドイツに勝利がもたらされるなら、実行しよう」とコステリッツは語る。しかし彼の目にはヒトラーは狂っているとしか思えず、人類の財産と言うべきパリの破壊を躊躇する。部下が「美しい町ですね」と語りかけるシーンが印象的だ。
映画でよく描かれるドイツ軍人の例にもれず、コステリッツはゲシュタポ(ナチス親衛隊)を毛嫌いしている。親衛隊員との面会時に、対決に備えたのか引き出しの拳銃に目をやる場面がある(結果的に親衛隊員との銃撃戦にはならない)。私はてっきり、ラストでこの拳銃で抵抗するか自殺するのではと思ったが、最後まで使われなかった。この「使われなかった拳銃」が、本作のテーマを象徴していると思う。

連合軍はパリ近郊まで迫り、レジスタンスもそれに呼応するように武装蜂起。警察署やルーブル美術館などパリの一部を占拠する。コステリッツは中立国のスウェーデン領事(オーソン・ウェルズ)の勧めに応じて、レジスタンスと休戦協定を結ぶ。連合軍の侵攻までパリの破壊を引き延ばす時間稼ぎだが、レジスタンスをテロリストではなく、正式な交渉相手だと認めたという事でもあった。
コステリッツがパリの破壊を命じなかったのは、単なる博愛精神だけではなく、自分が戦争犯罪人として裁かれるのはご免だ、という思いもあったのかも知れない。それはともかく、狂気が支配する戦争において、その狂気を凌駕する理性の働きがあったという事実は特筆すべきであろう。

固い話が続いてしまったが、全編に登場するオールスターキャストを見ているだけでも楽しめる映画である。フランスの2大スター、アラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドが画面共演を果たしているのも嬉しい。ドロンはドゴール派の政治家デルマを、ベルモンドはレジスタンスの闘士で臨時政府の代表モランダを演じている。 
ほかに中心となるキャストは、先に述べたオーソン・ウェルズ、彼とともに政治犯として逮捕された夫を救うべく奔走するレスリー・キャロン、デルマに派遣されて連合軍との交渉役を務めるガロア少佐を演じるピエール・バネックがいる。ガロア少佐が連合国の陣地に入ると、カーク・ダクラスやグレン・フォードなどアメリカ側のスターが登場し、映画はいよいよパリ解放の場面に突入する。

4年ぶりに鳴らされるノートルダム寺院の鐘、通りを埋め尽くす大群衆、引きちぎられるハーケンクロイツの旗、「ラ・マルセイユーズ」の合唱、そして群衆の悪罵の中で降伏するコステリッツ将軍。激流のようなクライマックスの展開は圧倒的だ。そして外されたままの受話器からは、ヒトラーが『パリは燃えているか?』と問いかける声が、むなしく響き続けていた・・・。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 悲しい
  • スペクタクル
  • パニック
  • 恐怖
  • 勇敢
  • 絶望的
  • 切ない
  • かっこいい
  • コミカル
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ