大物量の映像と手堅い脚本、魅力的な悪役
- ker***** さん
- 2016年10月6日 20時05分
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第二次世界大戦末期、ドイツ軍の戦車による大攻撃「バルジの戦い」を、大きく脚色して映画化した作品。本物の戦車がいっぱい出てきて大暴れする豪勢な映像は、男の子なら興奮すること間違いなしである。
ストーリーも、悲劇あり成長あり、恋愛あり復讐あり、自己犠牲ありオトボケありで、万人が楽しめる王道の筋となっている。また戦争を構成する諸要素が一つの物語としてガッチリ組み合っているのも戦争映画としての面白さを支えているのだろうと思う。(たとえば戦車隊の進軍のために、橋を確保する。橋を確保するために、あらかじめ工作員を潜入させるなど)
また敵方の主人公ヘスラー大佐の、有能な美男子で非常に魅力的だが、終盤で平和よりも戦争を愛するという本性があきらかとなり、けっきょく観客の側で感情移入はしかねるという人物造形は、悪役としてうまい落としどころだと思う。
ヘスラーがヤバイ奴だと終盤でわかるという構成はスリリングで、それまで彼の格好良さに酔っていた観客はハッとさせられる。自嘲めいた「戦争に勝っても負けても、軍人は損をする」というセリフが、本当は「だから戦争が続けばよい」という意味だとわかったり、あるいは若い戦車長たちの合唱の際、お付きのコンラッド伍長に歌わせ、自分も歌ったのは、どういう心理からか、後から考えさせる仕掛けもあり、巧妙な脚本だと思う。
難点を挙げるなら、戦闘シーンの兵隊の死に方が、両手を挙げて「うわーっ!」と叫ぶような、簡単な芝居なので、興ざめしてしまうという点。小銃に撃たれたリアクションならともかく、戦車砲でもそれなので、流石に絵面が安っぽすぎる。人が撃たれる映像技術は、意外と新しいものなのだと知った。
それまで雪の降る森や町で戦っていたのに、ラストバトルで舞台が急に乾燥した荒野へ移ったのは、本当はおかしいのだが、全然そのおかしさに気がつかなかった。特撮ドラマで採石場へのワープを散々経験しているせいで感覚が麻痺してしまっているのだろう。
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