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ハンガー (1983)

THE HUNGER

監督
トニー・スコット
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3.18 / 評価:34件

都会派吸血鬼の愛と孤独

  • 一人旅 さん
  • 2016年8月20日 15時04分
  • 閲覧数 889
  • 役立ち度 4
    • 総合評価
    • ★★★★★

トニー・スコット監督作。

現代のニューヨークを舞台に、愛する青年吸血鬼・ジョンが急激に老化していく中で、女吸血鬼・ミリアムと彼女に誘惑された医師の女・セーラが辿る運命を描いたドラマ。

トニー・スコットの記念すべき長編初監督作品。恐怖演出一色の吸血鬼ホラーというよりは、現代に生きる吸血鬼の愛と孤独を描き出した内容になっているのが特徴だ。同じく現代吸血鬼の人生を描いたニール・ジョーダン監督の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994)と作風やテーマの点で被るところがあるが、本作の方がずっと以前に製作されている。

ミリアムには何百年にも渡って愛し合ってきた青年吸血鬼・ジョンがいたが、ある日何の前触れもなくジョンが突然老化し始める。愛する人を失いかけていく中で、ミリアムは次なる“愛する人”を求めて街へ繰り出す。その中で、老化現象について研究する人間の医師・セーラと出会う。ミリアムはセーラに接近し、新たな愛の獲得を図る...。
ミリアムの生命は永遠だが、愛する人の生命は途中で途絶える。そのため、たとえミリアムの愛は永遠であっても、愛する人の愛はいつか消えてしまう。永遠の生命が与えられたがゆえに、繰り返し訪れる愛の喪失に直面するミリアムの“永遠の孤独”を悲哀に満ちた演出で描き出す。

主人公ミリアムを演じるのはフランスの名優カトリーヌ・ドヌーヴ。絶望したミリアムが壁伝いにふらつく姿はポランスキーの『反撥』(1964)で見せた体当たり演技を彷彿とさせる。飛翔したり咬みつくなどの吸血鬼らしい演技はほぼ見せないが、その代わりに感情の喪失した表情だけで吸血鬼としての孤独を表現してみせている。
セーラ役はスーザン・サランドン。ミリアムとセーラの女同士のセックスシーンは艶かしくセクシー、そしてとても繊細。
また、ミリアムの愛する青年吸血鬼・ジョン役を、2016年初めに亡くなったデヴィッド・ボウイが演じる。ただ、素顔を見せた演技は少しだけ。ストーリーが始まってすぐに老化現象が始まるので、半分以上が老人の特殊メイクで顔面を覆われた状態での出演になる。その特殊メイクのクオリティがやけに良いのが驚きで、本作から30年近く後に製作された『J・エドガー』(2011)のディカプリオの不自然メイクより遥かに完成度が高い。
街角でセーラをナンパする若者役でウィレム・デフォーもちゃっかり出演している(出演時間わずか10秒、2カット。お見逃しなく!)。

吸血鬼の苦悩に焦点が当てられている分、視覚的な残酷描写は幾分薄くなっている。ただ、吸血鬼の独特の殺害方法が印象的で、十字架のペンダントに仕込まれた小型ナイフで切り裂いて殺す。そのあたりの描写は痛々しくグロテスクで、出血量も多量。

そして、洗練された落ち着きのある映像とクラシック音楽のバランスが絶妙。現代の大都会に生きる吸血鬼の孤独というテーマにも良く合っている。本作は吸血鬼が主役の映画だが、不思議と普遍的な人間ドラマのように見えてくる。吸血鬼が苦悩するのは愛、孤独、老い。人間と同じだ。

詳細評価

物語
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