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バンビ

バンビ

BAMBI

72

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5.0

バンビとダンボ

バンビはディズニーの分岐点だと思います。 ディズニーはアニメーションを芸術まで高める事を本気で目指していたと思います。 単なる娯楽から芸術と呼ばれる文化にまで育てたかったのです。 実写よりも低くオマケとみられていたアニメを芸術までもっていき、 単なる小さなアニメ会社から他の映画会社と肩を並べる会社に したかったのだと思います。 つまり戦うべき相手は他のアニメというより実写映画です。 それは他のアニメ会社が大手の専属かアニメ部門だったのに対して ディズニーは完全独立企業だったからでしょう。 30年代のディズニーはアニメを芸術にする為 全てを掛けていたと言ってもいいでしょう。 でもそれが仇になりました。”ピノキオ””ファンタジア” そしてこの”バンビ” 当時全てヒットしたとは言えません。 戦争が重なったというマイナス要素は勿論ですが 数十秒のシーンにも莫大な予算を投入し 予算度外視でディズニー自身の思い入れが入りまくりの これらの作品は逆に倦厭され、「気軽に楽しめない」という 逆効果を生んでしまいました。 ”バンビ”と”ダンボ”がその後のディズニーの方向性を決める 対象的な作品になった思います。 バンビは財政難の中他の作品を中止してもこれだけは中止せず 5年間を掛け完成したアニメらしからぬリアリティを追求した作品でした。 ダンボは大規模なストライキから逃れる為、南米に旅行に行っていた時期に低予算で短期間に完成した初のディズニー抜きのディズニーアニメです。 結果ダンボはヒットしバンビはヒットしなかったのです。 バンビはリアリティの追求とセリフを極力さけ映像と音楽で語る詩的な物語進行。 懲りまくった特殊効果をふんだんに使った作品。 それに対して、分かり易く肩の力が抜けて芸術作品を意識させず のびのび創られた”ダンボ” 大衆はダンボを支持したのです。 それでディズニーのアイデンテティは崩壊してしまったのでしょう。 大衆は作り込んでもそこまで観ない。 「単純に分かり易く楽しい作品が好き」という事に気づいてしまったのです。 その為ダンボがその後ディズニーアニメの フォーマットになったのです。 つまりディズニー自身は作品にあまり介入せず あくまでも会社の社長として関わる様になったのです。 でもそうしなかったら会社はとっくに潰れていたでしょう。 むしろ会社としては健全な状態になりアニメはあくまでも娯楽と 割り切ったからこそ企業として残ったと思います。 ディズニーが資産を残したのは最後の10年といいます。 実写やTVやディズニーランドといった事業を展開し 単なるアニメ会社から一大メディア産業を築くのです。 もうアニメはその中の一つにすぎません。 でも白雪姫からバンビまでの今となっては異常な時期 とも思える芸術にこだわった作品群がディズニーの 本質に思えるのです。 アニメとしては”シンデレラ”とか”ピーターパン” とかの方が作品として完成度が高いかもしれませんが、 この時期の作品として成熟していなくとも「芸術をやろう」という熱意と 試行錯誤して空回りしている部分も含めてやっぱり凄いと 思います。

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