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必死の逃亡者 (1955)

THE DESPERATE HOURS

監督
ウィリアム・ワイラー
  • みたいムービー 10
  • みたログ 111

4.29 / 評価:30件

たかがサスペンスというなかれ!

  • le_***** さん
  • 2011年7月2日 21時13分
  • 閲覧数 313
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

完璧!
何度観てもいいですね。
サスペンスなのに、うれしくなっちゃいます。
これを観てない人に、サスペンスを語ってほしくありません。

監督のウィリアム・ワイラーはヒッチコックのようにサスペンスばかり撮っていたわけではありません。『嵐ヶ丘』『女相続人』『ベン・ハー』など多岐にわたるジャンルで映画を作りました。
最も有名なのは『ローマの休日』でその翌年に撮られたのがこの映画です。その後『噂の二人』『コレクター』などの問題作も世に送り出しました。
初めて観たときから記憶に残っていて、折に触れ観てしまいます。この映画の魅力は何なのでしょうか。

ストーリーは単純で難しくありません。脱獄した悪党三人が、平和に暮らすある邸宅に侵入し居座るが、最後は警察に包囲されて殺されるというものです。

三人組は、ハンフリー・ボガード扮するグリフィンと弟のハル、それに少し頭の足りない粗野な大男コビッシュで、家族は夫婦に娘と小さな弟です。
グリフィンが愛人に金を送ってもらうまで居座ることにしたのがこの家でした。

グリフィンと勇敢な父親との対決を軸に話が進みますが、三人組はそれぞれに自己主張するなどし、家族のほうは、父親も娘も家の外に出るものの家に残っている家族を心配し、警察や他人に一切他言せず、局面ごとに緊張感が漂います。
一方、冒頭から警察の動きも語られ、一片のサスペンスとはほど遠い、厚みのあるドラマとなっています。
それぞれの人物が、そのやりとりやセリフからきちんと描かれ、何気ない細部にいたるまで演出が効いているためです。回想シーンはないので、リアルな緊迫感が途切れません。

フレームに二人または三人以上いるときのフレーム内の位置や遠近が絶妙で、アングルや引きなどもうまく組み合わされていて、プロの匠を感じます。

タイトルロールからファーストシーンにかけて、不気味な音楽とともに、高めの位置から街並みを舐めるように動くカメラは、まるで適当な獲物を物色するかのようで、たったそれだけの演出で観る者をうまく誘い込んでくれます。犯罪者側の視点からの導入です。

グリフィンが玄関先から一歩入って、一人でいた母親に、拳銃を突きつけて一気に壁際に寄るシーンは、何でもないようですが、実にみごとです。

弟のハルは仲たがいの上、ひとり先にこの家を出ますが、見張っている窓のカーテン越しに、楽しそうな若者たちの姿を見たり、娘のデートのようすを見たりすることで、外部へのあこがれを映しだしています。

おかしさなどに無縁で、ストーリーの運びかたがうまく、それぞれのキャラクターがきちんと細かく書き込まれ、それに沿ってカメラが動けば、サスペンスタッチの映画でさえ、実に高品質の作品になるという、見本のような映画です。事実、充分楽しめます。

原題は`The Desperate Hours'で「死に物狂いの時間」「決死の時間」なので『必死の逃亡者』の邦題も、内容にふさわしく妥当です。

娘の恋人や警察の指揮官を含め、それぞれが演技もうまいですが、やはり演技と撮りかたに対する演出の力が、こうした作品を作り上げたのでしょう。
そう、それはあたりまえのことであり、映画制作に対する情熱だけでなく、制作の基本に対する誠実さを忘れていないだけのことなのです。
だから、恋愛モノであれ歴史モノであれ、いろいろなジャンルの映画が作れたと思うし、それなりの評価も得たのだろうと思います。

こういう映画をもし二度めに観るときは、フレームのなかの主要人物でない部分に注意したり、人物のどこから上を映しているかなどに注意すると、作り手の技が見えてくると思います。

全体に優れた作品で、ただ恐怖感を煽るだけに終わらせない、ベテランの味わいがあります。

ラストで、グリフィンは空とわかっている拳銃を持ち、玄関の外へと投降します。直前にコビッシュが警官隊に撃たれたのはわかっているわけだから、警官隊に対するこれは彼のスタイルなのでしょうか。
巨大なサーチライトのひとつにその拳銃を投げつけた直後、彼は狙撃され死亡します。

ラストは、この悪党どもを呼び寄せた自転車が映され、娘の恋人が父親に家へと招き入れられるシーンとなり、観客もろとも安堵できます。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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