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陽のあたる場所

陽のあたる場所

A PLACE IN THE SUN

122

toy********

4.0

子どもは周囲に翻弄されて……

サスペンスと恋愛三角関係を絡めた走り、という位置付けでいいのでしょうか。 エンタメに徹した作りなのか、ジョージ・スティーブンス監督の事だからなにか深い意味があるのか、色々捉え方はできる感じですね。 子どもの思考や思想を育てるものが、温かみのあるものから大衆洗脳装置に変わりつつある時代への警鐘、という見方をします。 ジョージを育てたのが信仰心篤い母親。 この母親が無表情で非常に怖い。限度を超えて狂信的な雰囲気を持たせていたように思います。温かみのある母親というよりは、何でも神を持ち出し済ませる、放置型の恐怖の母親の側面もある印象。 まあ彼女も非常につらい過去がある人なんだろうなあとは思いました。 神が信仰を与えるものというより、人を洗脳し良心を忘れさせる危険な装置、という扱われ方をしている感じがしました。こういう家庭環境でジョージはまともに育ったのか?と。普通に育てられたいという欲求を阻まれて育ってきたのではないのでしょうか。 その家をようやく出られたかと思えば、社内恋愛さえ許さない会社に就職。まだ子どものジョージとしては、ただ初めて素直にアリスに愛情表現したかっただけなのでは。 ジョージをアンジェラに向かわせた一因は、アリスへの愛情を阻害する会社の雰囲気にもあったのではないですかね。言わば規則という装置。 まあ一応大人扱いするのなら、本人たちはまず社内恋愛禁止というものへの対処をしろよ、と。昇進するなら、アリスを退職させても良かったのでは。アリスも他にも仕事はあったでしょうに。なぜ自分で気づかないのか。まあ設定的にそうしちゃ物語は悲劇の方向へ進まないからなのでしょう。 いずれにせよ、ジョージは家を出て宗教から自由になったものの、仕事場でも人としての素直な欲求を阻まれました。それで余計、美に向かう本能に歯止めをかけられなかったのではないのでしょうか。 美というより、本質、でしょうか。幼少期より人間の本質(真・善・美)に触れられなかった子どもの悲劇、というテーマをこの映画に見てしまいましたが。 湖=事故、死と繰り返しニュースを流すラジオもまた大衆洗脳装置ですね。ここでジョージは悪知恵を身につけます。 大切なものを掴めず、ふらふら己がままならないまま成長し、周りの洗脳するものにたやすく左右されてしまう人間になってしまった、と。人間をそうするのが仕事のメディアのけたたましさも何度も映ります。 殺意は何とか強い意志で押し止めましたが、法廷では信頼されません。マーロウ検事のオールを壊すパフォーマンスに影響されたのか、最終的には陪審員はジョージ死刑と判決を出しました。 刑務所に現れる牧師と母。ここでもまた神が何とやら、と。ジョージにしてみればもう精神やられますね。生まれてからわけもわからず神に翻弄され、規則に、ラジオに、メディアに、社会に翻弄され、また最後は神かいなと。 良い悪いの判断は皆さんで考えて下さいという感じのラスト。 サスペンスにパニック、ホラー要素、サイケデリックの萌芽もやや見られていた感じがします。それを際立たせるカメラワーク。 子どもの育て方、親も簡単に周囲の情報に左右されすぎちゃダメよという教訓があった感じがします。いずれにせよ時代を画する映画だったのでしょう。 純粋評価3.8。星4。

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