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拾った女 (1953)

PICKPOCKET/PICKUP ON SOUTH STREET

監督
サミュエル・フラー
  • みたいムービー 6
  • みたログ 28

4.29 / 評価:7件

こーいう映画を見ると安心するんだな

  • ser******** さん
  • 2009年5月8日 20時38分
  • 役立ち度 15
    • 総合評価
    • ★★★★★

昔、名画座の館主かテレビの映画番組の解説者になりたかった(笑)
当然映画のセレクトに関係出来ると信じていたから、好きな映画を毎週かけては悦に入る人生を夢見ては、一人、ブツブツとラインナップを作っていたもんです。
例えば名画座の2本立てなら「ダーティハリー」「ダーティハンター」の《ダーティ》2本立てとか(笑)、「バルジ大作戦」「特攻大作戦」の大作戦2本立て、はたまた今なら「おくりびと」「ライムライト」=来夢来人のなんだそのラインナップは!2本立てとか(爆)。よーするに好きな映画に囲まれて暮らしたかったわけです。

でも今や名画座は消え、テレビも名解説のない時代となった今、こんな遊びが出来るのも自分ン家で勝手に楽しめる、文字通り《一人上手》な平和な時代となったわけで。これはこれでちと寂しかったりする(笑)。そんなラインナップの端くれが先日、整理をしていた棚から見つかって一人大笑いした。何故かミュージカル映画特集に「死霊の盆踊り」が入っていて我ながらこれが映画館主なら観客に殴られそうだな、と見ると、そこに、
「拾った女」「私が棄てた女」の二文字が。
う~ん、これはいい!全然毛色の違う映画なのに、何故かゴロがよくて自分が観客なら絶対入ってしまう!と思い浮かべ、思い出した棚から「拾った女」を引っ張り出して再見。
B級映画の天才・サミュエル・フラーの作品なのだが、やっぱりいいんだなコレが。

いわゆるサミュエル・フラーはヌーヴェルバーグの連中が《発見》した作家。ハリウッドのまさに2本立映画のために作られた様な添え物的B級映画をたくさん作った監督。だがだからこそ、人を食った様な作家魂をあちこちにちりばめた映画を作った人物だ。この「拾った女」もそんな一本だが、実に面白い。反共時代のアメリカを運命的なメロドラマにちりばめ、それでいて実にスリリングな物語に仕上げている。
主人公はスリ。一人の女から財布をすったものの、その中に政府の極秘マイクロフィルムが入っていた事から米ソのスパイ戦に巻き込まれる。そしてすった女との間に淡いラブロマンスが。

演じるリチャード・ウィドマークもいいが、個人的には情報屋を演じるセルマ・リッター(「裏窓」の看護婦さんです)が抜群にいい。うらぶれた街道でつらい人生を送ってきたケチな犯罪者くずれのオバさんが、敵側のスパイに脅され、それでも国家を裏切らない仁義を見せる。人生に疲れ果て、いっそ死にたいとこぼしているオバさんですら、《アメリカ》という国を信じている姿。そんな《裏道》街道の人間達の描写が抜群にいいのだ。大作ヅラしていない分、いいたい事は言わせてもらうぜ!といったフラーの反骨精神こそがやはりいかにも二番館的な名画座のラインナップには丁度いい。こーいう映画を見ると正直、私は安心するんだな。

思えば田舎にいた頃は映画館では必ずこーいう添え物的映画がメインの映画にひっそりとくっついてきた。そしてそちらの方が断然面白かった記憶もあったりする。映画の王道は確かに娯楽だが、むしろそちらの添え物の方に映画の《魂》を感じた事もしばしば。だが今ではその《添え物》という文化も映画の世界から消えてしまった。

カルト映画はそーいう文化から誕生する。決して単館なんかからではない。
ふと、懐かしいラインナップを眺めながら私は仕事から戻ってきたカミさんと酒を交わした。
「世知辛い世の中だよな」
そんな呟きに、カミさんはニコニコと、
「でも見たいなあそれ」
と、見終わったばかりの「拾った女」のビデオを回し始めた。

こーいう女を見ると安心するなあ(爆)
傍らでモノクロの画面を見つめるカミさんの横顔を肴に、私もいつの間にかもう一度映画を見始めていた。
・・・やっぱりこーいう映画を見ると安心する。
まだ名画座の主人を夢見た時代は確実に存在する。こーいう観客が存在する限り。
次は「私が棄てた女」を借りてこようっと(笑)

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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