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フィアレス

フィアレス

FEARLESS

122

tis********

5.0

心の無い現実。心が篭る呪縛。

直面した死の瞬間は彼の時間と命を止めた。 現実とはそこに存在が居ることではなくて、心がある場所なのかも知れない。 飛行機事故に遭遇し、生き残る。 ヒーローとなったその男は心を止めたまま現実を歩いている。 家族という現実の世界が、いつしか自分の居ない場所に変わっていく。 彼の周囲は何も変わっていない。 変わってしまったのは彼の心。 真実の恐怖「死」を「体験」してしまった彼は自分が生きている事が不思議で不安だ。 「呪縛を共有」した存在に「現実」を感じ、 その「呪縛」を外部から見たものに現実どころか存在すら感じない。 うわべをなぞった絆などというものではなく、 はるかにリアルな絆を描く。 人の心を癒している、慰めている。 その事実が彼の唯一の「生」の瞬間なのか。 若しくは自分に投影されたその姿を自分で慰めているのか。 人は心のよりどころを見つけながら歩いている。 休憩する場所もあり、 夢中で走り回る場所も有る。 そして、愛する存在との日々が「日常」であり、当たり前であった。 心のよりどころに寄る事ができるうちは「恐怖」すら「力」に変える事ができる。 ともに乗り越え、ともに戦う事で気持ちをつなげるのだ。 父親であり、夫であるその男は死んだのだ。 正確にはそのよりどころすら失ったのだ。 抜ける事の無い、取れることの無い「呪縛」 開放する為には何が必要なのか。 この映画はその闇とそして少し差し込む光を見事に描く。 押し付けがましい感動など無い。 被害にあった彼にすら なぜ? と嫌悪を抱くほどその心が見えない表現をする。 取り巻く環境もなんとリアルな事か。 本当の息子の存在が現実なのだ。 しかし、自分を慕う同じくらいの年頃の男の子に戸惑いを覚える。 男の人生など、他人がいなければ成り立たないのだ。 「孤独な男だ」などと心を奥にしまっているならば、 自分を好きと言ってくれる人とだけ付き合えばいい。 しかしそれではいつまでも孤独なままなのだ。 死と直面した彼の心に他人は居ない。 「嘘がいやだ」と叫ぶ錯乱した彼の心は、 自分が生きていることさえ「嘘」なのだ。 ヒーローじゃない。 生き残りじゃない。 恐怖を乗り切ったのでもない。 「生き残ってしまった」だけなのだ。 生を感じる為にはあまりにも惨い多くの命が目の前で消え去った。 誰も攻めることもできない。 誰もその責任を取ることなどできない。 オークランドを走り「建築物」を見て歩く。 唯一自分が生きている場所がそこにあるかのように。 そして死者へプレゼントは自分へのレクイエムなのだろうか。 ご紹介頂いた方はきっと私より私のツボを知っている。 なぜか映画が終わり「生きている」実感をした。 これだけ紹介を頂けば、一本位酷評も出るだろうと思うのだが、 すべての作品が前作を超えるか、若しくは並ぶ。 私が単純なのだろうか。 この映画で観た「心の回帰」 きっと私は映画にそれを求めているのかも知れない。 息子との絆を明確にして欲しかったが、きっとそれも演出なのだろう。 ラストの彼の表情で満点は揺るがないものとなった。 いや、☆5つでは表現できない。 一冊のスクラップブックが心に現実をもたらした。 そこにあったすべての貼り付けられた物が、家族の思いを含んだ「現実」だった。 そう、人は一人では生きていけない。 そんな当たり前の事を分かっていると思うのだが、 本当のひとりぼっちは「呪縛」に篭る事だ。 さあ、明日も見事に生きていこう!

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