ここから本文です

フィツカラルド (1982)

FITZCARRALDO

監督
ヴェルナー・ヘルツォーク
  • みたいムービー 104
  • みたログ 236

4.22 / 評価:101件

最高のカタルシスを得られる映画だ!

天晴れ!…って感じの、途轍もない監督バカ映画。

夢を追っては失敗ばかりしているペルーの町イキトスの男・フィツカラルド。
先住民の子供たちからは慕われているけど、白人社会の男たちからは奇人扱いされ、嘲りの対象ですらある。

そんな彼は、ブラジルの都会マナウスで見たエンリコ・カールソーのオペラに感激し、地元イキトスにオペラハウスを建てようと思い立つ。
「陸の孤島」イキトスにオペラハウスなんか作ってどーすんだよ?…ってツッコみたくなるが、それこそが、夢を追う男・フィツカラルド。

彼の恋人である(金蔓でもある…笑)女郎屋の肝っ玉女将・モリーは、ゴムで儲けて建設資金を稼ぐことを提案する。
そこで、アマゾン奥地の千古斧鉞を容れぬ手つかずのゴム林へゴムを採取に行くことにする。
なぜそこが手つかずかと言えば、唯一のアクセスである川の途中にゴム運搬に適した大型船が遡上不能の急流が存在するからだ。

そこで彼は一計をめぐらす。
目的の川と、山を隔てて並行している急流のない別の川を遡上し、オスマン帝国皇帝・メフメト2世のコンスタンティノープル攻略戦の「オスマン艦隊の山越え」宜しく、船を山に上らせ(!…ア、アホな)、目的の川の急流を越えた地点に船を降ろそうというのだ。

狂気の沙汰以外の何物でもない!

フィツカラルドも狂気だが、ヴェルナー・ヘルツォーク監督も狂気だ。
ミニチュアセットによる特撮ではなく、本物の船を作製して本当に山を越えさせての撮影だ!
船頭多くして船山に上る…監督バカ一人ありて船山に上る(笑)。
フィツカラルドは、船が山を越せばゴムによる一攫千金が約束されているが、ヘルツォークには、本作品の興行的成功が約束されているわけではない。
もはや蛮勇ともいうべき行為をやってのけたヘルツォークの監督バカぶりには脱帽するしかない。

さて、フィツカラルドはモリーに提供してもらった資金で船を買入れ、モリーや大勢のイキトス市民に見送られて、華々しくゴム林へ向かって出発する。
しかし、途中恐れをなした船員たちが逃亡してしまい大ピンチに…。
でも、捨てる神あれば拾う神あり。
船に乗り込んできた先住民たちが、どういう訳か山越えに協力してくれたのだ。

朝靄の中、ゆっくりと船が山を上っていくシーンは、まさに「圧巻」という言葉に相応しく、もはや感動を通り越して溜息もの。
映画史に残る名シーンだ!

先住民たちの協力もあって、船の山越えには成功したのだが、思わぬ陥穽が待ち受けていた。

目を覚ますと、何と、係留していたはずの船が川を下っているのだ。
船は制御不能に陥り、遂に件の急流を下ってしまう!(流石に、如何なヘルツォークとはいえ、船が急流に翻弄されるシーンはミニチュア撮影だ)
ゴム林へ向かうことは不可能となり、全ての努力が水泡に…。
先住民たちが協力的だったのは、迷信に基づいた呪術に船を利用しようという目論見があり、彼らはフィツカラルドの就寝中に舫綱を解いてしまっていたのだった。

失意のドン底の中、イキトスに戻ってきたフィツカラルド。
そんな彼を迎えてくれたのは、満面の笑みを浮かべたモリーだった!
いやー、実に感動的なシーンだ。
こんな笑顔を見せられた日にゃあ、もう何もいらないぞ(笑)。

フィツカラルドは、用済みとなった船を売却したカネで、楽団を雇って「船上オペラ」を催す。
彼は葉巻を燻らせながら、とても全てを失った男とは思えない実に満足げな表情で鑑賞する。
サイコーのカタルシスを感じるシーンだ!

「古き良き」ハリウッド映画のようなハッピーエンドではない。
かといって、ヌーヴェル・ヴァーグやアメリカン・ニューシネマのようなバッドエンドとも異なる。
人生とは、所詮自己マンでしかないってことを教えてくれる素晴らしいラストだ。

ロケの過酷さから、当初主要な役に予定されていたハリウッドスターたちが病気で倒れたり逃亡(?)してしまったりで、主役のお鉢が回ってきたのは、かつて、同じくヘルツォークが監督した、やはり過酷なロケで知られる「アギーレ/神の怒り」で主役を張ったクラウス・キンスキー。
ハリウッドスターたちの退場は怪我の功名か、彼ならではの「怪演」で狂気の夢追い人を演じきっている。
主人公のすべてを受け入れてくれ、剰えカネまで出してくれる男性にとって実に都合のいい存在である(女性視聴者はとても共感できない?…笑)恋人のモリーを演じたのは、「イタリアの可愛い女猫」、CCことクラウディア・カルディナーレ。
先述の主人公を笑顔で迎えるシーンは、彼女の若き日の涙で終わる代表作とは対照的で興味深い。
それにしても、モリーとフィツカラルドって、映画史上最強の美女と野獣カップルじゃないかな?(笑)

まあいずれにせよ、今後二度と撮れないであろう唯一無二の映画で、CGを多用してリメイクしてみたところで、所詮「本物」の映像には敵わないだろう。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • スペクタクル
  • ゴージャス
  • ロマンチック
  • 勇敢
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ