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冬の光 (1962)

WINTER LIGHT/NATTVARDSGASTERNA

監督
イングマール・ベルイマン
  • みたいムービー 22
  • みたログ 93

4.31 / 評価:45件

ベルイマンのタイトルには春だけがない。

  • 二酸化ガンマン さん
  • 2015年5月29日 0時29分
  • 閲覧数 1158
  • 役立ち度 4
    • 総合評価
    • ★★★★★

イングマル・ベルイマンの1962年作品で、日本では1975年に公開されています。いわゆる「沈黙三部作」の2作目ですが、世界最強のコックが戦う映画ではありません。
主人公は寒村の牧師です。礼拝をしていると一組の夫婦が相談があると言ってやってきます。牧師は体調が悪いので早く帰ってタマゴ酒を飲んで寝たいのですが、これも役目なので仕方なく話を聞きます。やってきたのはマックス・フォン・シドーの漁師とそのカミさんです。相談の内容はと言うと、シドーが中国が核兵器を開発したというニュースを読んで以来神経衰弱状態に陥っているというのです。おまえは「生きものの記録」の三船敏郎か、そんな事で悪霊パズズと戦えるかと言ってやりたいところをぐっとこらえ、牧師は後刻会う約束をします。
その後に村の女教師イングリッド・チューリンがやってきます。彼女は牧師が最愛の妻を亡くした後の愛人なのですが、ちょっと面倒くさい人なので牧師はうんざりしています。イングリッドは昨日渡した長文の手紙を読んだかと聞きます。彼女が帰った後読んでみるとこれがまた実に面倒くさい内容です。演出としてはカメラがイングリッドの顔を正面からとらえ彼女が朗読している体を取ります。観客は直接彼女から面倒くさい告白を聞いている気分になりうんざりします。わざわざ日常の面倒を避けて映画を見に来ているのにどうしてまたここで面倒くさい思いをしなければならないのかよくわかりませんが、ベルイマンの映画とはそういうものです。
牧師役はグンナール・ビョルンストランド。そういえば「女はそれを待っている」でもイングリッド・チューリンと不仲の夫役でした。結局この二人は無理なんですよ。
この後シドーがまた深刻な表情でやってきます。かつて娘を殺めた3人の人間を殺して鮮血の美学を実践したり、死神とチェスで対決したりした勇猛な過去があるとは思えない憔悴ぶりです。彼は核の事が気になってカツオの一本釣りも出来ない状態なのですが、牧師は彼にありきたりの事しか言えません。この後シドーは結局猟銃で頭を撃って自殺してしまいます。
神の言葉を人々に伝える役割でありながら、なんという無力であろうか。どうして神は沈黙を続けなさるのか。牧師の苦悩は深まるばかりです。しかもイングリッドは愛の言葉と愚痴を交互に繰り返して面倒な事この上ありません。わびしい村の中に小さな教会がぽつんと建っているだけの荒涼とした風景、シドーが死んでいる川と向こうに見える冬の木立、スヴェン・ニクヴィストのカメラは今回も冴えわたっています。
とにかくベルイマンの映画ですから苦悩だらけです。その苦悩が宗教的で哲学的な深い思索から発しているというより、相談に来た人間を救えないとか自分の女とのあれこれとか、実に俗な問題なのがリアルに身近です。「沈黙シリーズ」(違うっつーの)3作目の「沈黙」が、人間の孤独を比較的観念的に描いていたのに比べれば非常にわかりやすいと言えます。
牧師は学校に行き、イングリッドに愛していないから別れると言います。その後牧師はシドーが自殺した事を妻に告げに行きます。イングリッドはついてゆく事にして、2階にいる叔母さんに帰りにコロッケでも買ってくるわと言って出かけます。学校に住んでいるのですね。二人とも人を諭したり教えたりする仕事をしているわけですが、その二人が泥沼にはまっている状況が皮肉です。
牧師は自分がいかに妻を愛していたかをイングリッドに語りますが、ラスト近くで彼女はある男から牧師の妻は浮気者だったという話を聞きます。本当かどうかはわかりませんが、それでなくても深い苦悩の中にいる牧師は実はさらに救いがたい状況である事を彼女は知ります。ラストは牧師が教会で礼拝を行う場面(つまり冒頭と同じ)ですが、それを聞くのはイングリッド一人だけ。私はこのラストを果てしない絶望と取りましたがこれを彼女と結ばれる暗示としてほのかな希望と捉える見方もあるようです。
表面的にはわかりやすい話ですがおそらく物語や映像の端々に深い暗喩等があるのでしょう。例えそれがわからなくても、ベルイマン作品はやはり見応えがあります。特にこの作品や「仮面/ペルソナ」などはその好例でしょう。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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