「まるでそびえたつクソだ」で吹替版未公開
- hoshi595 さん
- 2019年1月14日 4時25分
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「2001年宇宙の旅」で知られるスタンリー・キューブリック監督の戦争映画。原作はグスタフ・ハスフォードの「ショート・タイマーズ」(短期現役兵)
だが、日本で出版の題名は映画と同じ「フルメタル・ジャケット」(完全装甲弾)。戦争映画もいろいろあるが、本作品の主役はアメリカ海兵隊である。
物語は、海兵隊の新兵訓練から始まり、ベトナムでの実戦へと2部構成になっている。原作は映画とは違って「銃剣の魂」で訓練所、「殺害戦果」で市街地戦闘、そして「歩兵たち」でジャングルのパトロールという3部構成になっている。映画はキューブリック監督が遠方のロケを避けた為二部となったようだ。
主演は、「カットスロート・アイランド」でジーナ・ディヴィスと共演のマシュー・モディーン。その他個性的な俳優が多く出演しているのだが、特筆すべきは訓練所の教練指導員役のロナルド・リー・アーメイ。何しろ実際の海兵隊の軍人であり、当初演技指導役だったのが、誰も演じられず本人が出演となった。
厳しい訓練のシーンは、さすがアメリカが誇る海兵隊と、その迫力に圧倒されるのだが、ここで予想外の問題が発生した。それはキューブリック監督のプロ意識の強さから翻訳まで自らチェックした結果、日本語の翻訳が実際に訓練で使われている”汚い言葉”を忠実に訳していないとされたからだ。
日本語の翻訳は当初有名なT女史が担当だったようだが、多分”放送禁止用語”等に注意して穏やかな表現にしたためと思われる。そこで字幕翻訳を務めた原田真人氏に白羽の矢が立ち、日本語吹替版まで準備されたのだが、それは劇場公開だけでなく、TVでの放映も実現しなかった。それほど”汚い言葉”が多いのだ。
従って、本作品は女性が観るのに相応しい映画なのか?という問題まで発生してしまう。戦争とは言え”殺人者”を育成する過程の凄まじさを原作とキューブリック監督は偽りなく伝えたかったに違いない。その結果、海兵隊で常用されている言葉そのものの字幕翻訳が生まれたのだから原田真人氏に感謝したい。
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