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ブロードウェイと銃弾 (1994)

BULLETS OVER BROADWAY

監督
ウディ・アレン
  • みたいムービー 100
  • みたログ 523

3.87 / 評価:176件

これぞウディ・アレン作品だ!

  • No more sot さん
  • 2015年4月10日 22時50分
  • 閲覧数 957
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

本作は90年代のウディ作品を代表する一つであるが、話自体は1920年代のアメリカのショービジネスを舞台にしている。

実際に20年代の当時がどうだったかはともかく、ケツもちにマフィアを登場させる設定や、ノスタルジックたっぷりな音楽など説得力は抜群。

ただ、今作がすごいのは、こういう過去を扱った作品でもちゃんとウディ・アレンの作品だなー、って誰が見てもわかることだ。理由は後述する。

登場人物はウディの作品よろしく今回もアイロニーでキザなセリフを吐きまくる。劇中劇の主演女優にいたっては日常生活における言葉の一つ一つがメタ的なセリフばかり。いやいや、こんなやつおらんやろー!って誰でも突っ込みたくなる完全なコメディ仕立てになっている。

その一方で他の人物設定に過食症の男優がいたり、マフィアのボスの愛人で大根役者、でその大根役者をなぜか疎んじるアーティスト気取りのボディガードだったり、親友の恋愛相談に乗りながらその裏でその友人の彼女としっぽりやってる太っちょとか、まあ濃い面々が集まっている。

また、こうした人物設定とウディ演出がうまくかみ合い、全編にわたって良いテンポで会話劇が続くので飽きずに観ることができる。

さて、今作がすごいのは過去を題材にしたにも関わらず、だれがどう見てもウディ作品だということだと言ったがどういうことか。

つまりはこういう理屈だ。

おそらく監督の名前を伏せて何かしらの作品を観た時に、ウディ・アレン作品は容易に監督名を良い当てれる部類だ。今作もしかりで、たぶん一度でもウディの映画を観たことのある人はすぐにわかるはず。

おしゃれなクレジット、テンポの良い形而上学的な会話、若干鼻につっく主人公の独り語りなどなど。きっかけはどうあれ、ウディの映画は彼の作品だとすぐわかる。

そういった作家はウェス・アンダーソンしかり、黒澤明しかり、一種の教科書的な存在であり、既存の当り前を過去のものにするイノベーターである。

ウェス・アンダーソンは画面上にシンメトリーさを求め、ありきたりな構図を使わずに登場人物の心情や立場を構造的に表現した。それに対し、黒澤明はそれまでの構造的な殺陣(人を斬っても血が出ないこととか)を否定しよりリアリティを求めた。

それらに比べてウディ・アレンはどうか。

個人的には、彼は作品良い話に落ち着きそうなところを、うまく肩すかしな感じの演出で台無しにする作家だと思う。

まず一つに、ふつうならこういう流れならオチはこう!っていうことをあえて外す。それにより話にリアリティを持たせている。さらに、それはシニカルに物事をとらえるという斜に構えるというよりも、そもそも人そのものが矛盾にあふれていてるが、それをも肯定するという2重、3重の意味合いをはらませる。

これは明確にそれっぽいことを言ってる厨2病映画(メメントとかマトリックスとか)とは異なった哲学的、極論で言えば人生に意味などないという実存主義的な意味合いが感じて取れる。

そして彼の作品がすごいのはそれと別に、「肩すかし」演出である。

たとえば今作のクライマックスの主人公と友人が恋人を取り合うシーン。
ここは前に主人公の言ったフラグを回収するところで、恋人に自分はアーティストではなくただの人間として愛していることを伝えている。
普通ならこれで終われば「うまくオチた」で済ますところを、なぜか新キャラが出てきて恋敵のポコチンが10cmしかないだのテクニックがないだの野次飛ばしている。
これどう見てもタイミング的におかしいし、シーンそのものにリアリティがあるとも思えない。何より言ってることがくだらない(笑)でもこの演出によって、それまで自分の世界観を持っているとされていたキャラクターが一期に俗物に見えてきて、逆に主人公が自分の俗っぽさを認めることを肯定させるきっかけを作ったともいえる。
「俺こんな演出もできるんだぜ!」っていうインテリっぽいやり方に見えるが、紐解くと実はただとってつけたものでもないのだ。

で、今まで言った「構造美」はウディ作品にすべて通じることであり、今作がそれにも増してすごい理由は別にある。

簡単に言ってしまえば1920年代の話なのに、なんか全然退屈じゃない!ってことだ。

ブロードウェイの大女優が売れない作家と恋に落ちるとかこんなべったべたな話「ムーランルージュ」でもあるまいし、ふつうミュージカルにでもしないと正直間が持たないでしょ。でもセリフを工夫する、テンポをよくする、音楽でノらせることと

え、そんな、まさか!

的な物語的な楽しさも相まってこうも化けるのかというくらい面白い具合に観れるものになっている。

以上の理由でウディ・アレンは天才だし、イノベーターだ。
今作もそんなウディを代表する一作と言えよう。

詳細評価

物語
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音楽

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