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ブロードウェイのバークレー夫妻

ブロードウェイのバークレー夫妻

THE BARKLEYS OF BROADWAY

109

みゅう

5.0

必見のダンスあり!

アステア・ロジャースです。 ストーリーは面白くもありつまらなそうでもあるのだけれど、二人の共演をカラーで見ることができる貴重な一本です。 この時、アステア50才、ジンジャー38才。 コンビ解消を決定的にした「カッスル夫妻」は全盛時の盛り上がりが全くみられませんでしたが、それから更に10年後の1949年の作品です。 そもそも楽しくなければ意味が無いダンス映画で、「カッスル夫妻」は夫が空軍での飛行機事故死で終わるという悲しいお話はいただけなかった。それに、歴史に残る偉大なダンスコンビであるアステア・ロジャースチームが、それほど歴史に残らないカッスル夫妻の伝記映画を演じるというのは本末転倒だった気がします…。 この作品はリタ・ヘイワースとの2作品以降はあまりパッとしなかったアステアの存在は、40年代半ばには、後の「バンドワゴン」の作中でも語られるように、過去のダンサーとなりつつあり、もうミュージカルは受けない、ミュージカルの時代は終わった…と言われ、アステアも引退を宣言していたという背景があります。 それが、ジュディー・ガーランドの人気にもあやかって、前年の「イースター・パレード」が意外なほどのヒットをみせたことから、同じ監督さんと配役でもう一本創ることになったものの、ジュディー・ガーランドが乱れた私生活と体調不良で出演不能となり、代役を探すうちに「夢よもう一度…」とばかり伝説のアステ・ロジャースコンビを夫妻の物語に仕立ててリバイバルさせたもの。 そして終わったと思われていたミュージカル映画人気はこの数年後「雨に唄えば」「バンドワゴン」を頂点とした、かつてない盛り上がりを見せるのだから世の中分からないものです。 アステアのような歴史上類をみない本物の芸術は何度でも復活するということでしょう。 それにしてもこの映画のストーリーはつまらない、単なる夫婦の痴話喧嘩と仲直り。ロジャースの年齢的な問題もあり30年代のようなスカッとしたラブ・コメディを創るのは無理だったのかもしれませんね。 でもダンスは相変わらず冴えてます。 黒のタキシードに白のドレス、エレガントを絵に描いたようなジョージ・ガーシュウィンの切ないバラードを唄い踊る"They Can't Take That Away From Me"にはうっとり。 勝手に動くタップシューズに振り回される振り付けが楽しい"Shoes with Wings On"。あの軽々した足のさばきは、本当に50才なのか信じることができません。 極めつけは"Bouncin' the Blues"。ドラムスのリズムが強調された二人には珍しいジャズ風ナンバー。これほどリラックスしてラフでカジュアルな楽しさに満ちた踊りは他にない、奇跡的なダンス。舞台の中央に背中を向けて駆け寄っていく準備段階からもう異空間。ハイハットのシャキっと刻む音でピタリと始まる爽快感。ここには真の芸術からしか現れない超越的な「軽み」がある気がする。 アステアが首に巻いてるのは手ぬぐいみたいに見える可笑しさがあるし、ベルト替わりにスカーフを腰に巻き、体は宙に浮かんで必要なステップのために足は変幻自在に床に降りてくる感じ。 ジンジャーのタップも長らく踊ってなかったとは思えぬほど軽快で上手いの何の、笑顔も楽しくノリが半端でなく、アステアとの呼吸もぴったりです。エレノア・パウエルもリタ・ヘイワースもシド・チャリシーも踊りは抜群に上手いのだけれど、ジンジャーが醸しだす楽しい華は別格です。 やはり歴史に名を残したダンシング・コンビは雰囲気ありますね。 バークレー夫妻は実在の人物でなく、アステ・ロジャースがもし夫婦だったら、こんなことが起きたんじゃないの…?、と企画がたてられて撮影に入った作品だということで、やはり面白そうでもあり、つまらなそうでもあります。

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