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ベルイマン監督の 恥

ベルイマン監督の 恥

SKAMMEN/SHAME

103

一人旅

5.0

剥き出しになる人間の本性

イングマール・ベルイマン監督作。 離島で妻と平穏な暮らしを送っていた男が戦争により自己を破壊される様子を描いたドラマ。 ベルイマン映画の中では比較的テーマが分かりやすい作品で、戦争が人間の精神にもたらす負の影響を男の言動の変化を通じて映し出している。 男(マックス・フォン・シドー)は気弱な性格で、そんな男を妻(リヴ・ウルマン)は度々責める。「根性なし!」なんて男として言われたくないような言葉で攻撃されるのだ。男の家庭はどちらかと言うとかかあ天下で、妻が男をひっぱっている。序盤で男の心の軟弱さを強調的に描くことで、戦争の悲惨な現実の被害者となった男の心の変化が一層明白になる。 男だけが戦争の被害者ではない。夫婦と友好な関係を築いていた市長も、戦争の狂気に心を侵され、権力を武器に夫婦に対し脅迫とも取れるような行動を取るのだ。和やかなムードで歓談している中、突如響き渡る市長の怒号。それまでの空気は一気に破壊され、狭い室内に緊張感がはりつめる。 戦争の恐怖と不気味さを感じさせる演出が素晴らしい。小舟にまとわりつく無数の死体。櫂で死体を船体から遠ざけようとしてもしつこくまとわりついて離れない。船上の人々が迫りくる死の気配に支配されていることを暗示したシーンだ。また、兵士が射殺される様子を映像ではなく銃声だけで表現したシーンも恐ろしく絶望的だ。 人を愛する気持ちや思いやる気持ちは人間性だが、冷酷さや攻撃性もまた人間性の一部だ。普段の平和な暮らしの中では後者の人間性は影を潜めているが、戦争という異常で狂気に満ちた環境に晒されると前者の人間性は失われ、人間性の醜い部分が人の心を支配してしまう。戦争だけが人間性の悪の部分を引き出す唯一のきっかけではない。逆に言うと、何らかの機会さえあれば人間の本性なんて簡単に表れてしまう可能性があるのだ。

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