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ベン・ハー

ベン・ハー

BEN-HUR

240

mat********

5.0

60年以上前のスペクタクル映像に釘付け

映画鑑賞そのものは、地上波テレビでもやっているわけだが、それは「無料だけれど没入感の全くない」日常の中に組み込まれたものだと理解している。自由にトイレには立てるし、バリバリと音を立てての飲食もやりたい放題だ。 いくばくかの料金、一つ座席に縛り付けられる窮屈感、なにより「そこに映画があるから」ばりに出向かないと鑑賞に至らない。映画鑑賞を趣味にしている人は、こういった制約をものともしない人たちで構成されているのだ、と改めて思った。 一度BSで見た時の何とも言えない高揚感、長丁場なのに、ほとんどだれることがなく、4時間近くを駆け抜けるのだ。しかも当方が生まれる前で、ここまでスケールの大きい映像が作られていたことに愕然とする。 もはやストーリーも何もかも、ご存知の名作であり、今更当方がこれ見よがしにネタバレしても仕方ない。でも、この作品がただのキリスト礼賛映画かと言ったらそうではない。 主役のみならず、登場人物の心の揺れ動きをメインに見れば、その時々で見せる表情の変化、それを気付かせるBGMの変化などが組み合わさり、人間ドラマとしての出来がこれ以上ないほど綿密に、誰が見ても一方向にしか考えが及ばないように仕向けている演出の数々が実にわかりやすいのである。 何より、適度な長回しが、物語に没入させるいい効果を醸し出している。演じる側にしてみれば、たまったものではないんだろうけど、そこは映画で鍛えられている名優ぞろい。監督の指示とかも難なくこなしたんじゃなかろうか、と思う。 今さらなんで、言うのもはばかられるのだが、特殊効果や、VFX、CGなんて言うその当時からすれば「魔法」のような映像技術もほとんどない時代。戦車シーンの観客はすべて動員されたエキストラだろうし(当然当時の風俗に照らし合わされた衣装に身を纏っているから、その数だけでも半端ない)、同じく行軍するローマ軍兵士もそれなりの数の鎧や武具も必要になってくる。アナログで撮らざるを得ない時代に、大量の予算をかけて撮った映画が、半世紀以上たった現在でも受け入れられ、斬新に映る。 テレビや円盤などで手軽に見られるのに、あえて劇場で見なくても、という声もわからないではない。だが、「スクリーンで見なくては迫力が伝わらない」映画も応分に存在する。本作はたとえミニシアタークラスであっても、スクリーンで見て、その大画面に繰り広げられるスペクタクルな映像に身をゆだねてほしい。リバイバルとして地元でやっているなら、ぜひ、時間を都合して見てほしい一本である。

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