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砲艦サンパブロ (1966)

THE SAND PEBBLES

監督
ロバート・ワイズ
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4.45 / 評価:64件

異文化衝突の悲劇

1966年のアメリカ映画『砲艦サンパブロ』は、スティーブ・マックィーンが唯一アカデミー主演男優賞にノミネートされた作品である。ほかにアカデミー作品賞、助演男優賞(マコ岩松)にもノミネートされた。監督は名匠ロバート・ワイズ。ロマンチックな主題曲はジェリー・ゴールドスミス。当時としては大変な話題作だったようだ。
上映時間は3時間を超え、「ウェスト・サイド物語」のように冒頭で序曲が流れ、ちょうど半分になったところでインターミッション(休憩)が入る。テレビでは荻昌弘の月曜ロードショーで、1972年10月2日・9日の前後編で放映された(マックィーンの声はおなじみ宮部昭夫)。

映画の舞台は1926年から27年にかけての中国(中華民国)である。この時代の中国は混乱の極にあり、中国に進出した列強諸国への反発が強まっていた時代だった。中国にいるアメリカ人の生命・財産を守るために進駐している、砲艦(ガンボート)サンパブロをめぐる人間模様を軸に展開する歴史大作である。
原題は「San Pablo」ではなく、よく似た発音の“The Sand Pebbles”(砂利)という。本作の主役である、老朽艦サンパブロが乗組員から砂利運搬船に喩えられているのに加え、戦争に向かう歴史のうねりの中で、砂利のように翻弄される人間の運命を象徴しているのだろう。

撮影は台湾と香港で行われたそうだが、当時の中国の街並みとか行き交う雑多な人々、戦闘シーンでの大河の絶景などは、さすが超大作と感心させられる。私は当時の中国をほとんど知らないが、描写が地に足が着いているというか、現在の目で見ても違和感を覚えないほど、かなり正確に描いているのではないか。
列強に蹂躙される中国を同情的に描くだけではない。進駐するサンパブロ号に入り込んでいつの間にか裏で支配するしたたかさ。偏狭な愛国心から同胞までも手にかけてしまう残虐さ。自分たちが中国人女性を殺害しておいて、その濡れ衣をアメリカ人に着せてしまう狡猾さ。本作で描かれたこの国の度し難さは、経済力にものを言わせて無理を通そうとする現代の中国を予見していたと思う。

本作のサンパブロ号の立場は微妙だ。当時のアメリカは中立の立場をとっていたから、現地民との間で一触即発の状況になっても発砲できない。群衆が暴徒化するのを恐れているのだ。かといってアメリカを美化するわけではなく、酒場の女性を競売品のように扱ったり、マックィーンと友情を結ぶマコ岩松を敵視する米兵が登場したり、先進国のおごりも描いている。
スティーブ・マックィーンは、他の映画で見せたヒーロー然とした姿とは一味違った演技を見せる。故郷で問題を起こして根無し草のような軍隊生活を選び、船のエンジン操作に生きがいを感じるプロフェッショナル。現実のマックィーンを反映した役といえそうだ。機関室で慣れた手つきで作業する姿には惚れ惚れする。同時にサンパブロ号の内部機構が細かく紹介され、この船への感情移入を容易にするという仕掛けだ。

それにしてもマックィーン(一等機関兵ホルマン)、キャンディス・バーゲン(女教師シャーリー)、リチャード・アッテンボロー(ホルマンの親友フレンチー)、リチャード・クレンナ(コリンズ艦長)、マコ岩松(中国人の“乗組員”ポーハン)、マラヤット・アンドリアン(酒場の女メイリー)、ラリー・ゲイツ(宣教師ジェームソン)といったメインキャストの中で、生き残ったのがキャンディス・バーゲンひとりというのは辛すぎる。
ヒロインのバーゲンは撮影当時10代だったが、母性を感じさせる大らかな笑顔には癒される。彼女はこの後も「ソルジャー・ブルー」「風とライオン」「ガンジー」といった異文化衝突もの映画に出演。90年代にTVドラマ「マーフィー・ブラウン」で当たり役を得ることになる。
劇中で悲劇的な恋愛をするフレンチーとメイリーだが、フレンチー役のアッテンボローは70年代以降に社会派映画の監督として名を成し、メイリー役のマラヤット・アンドリアンは「エマニエル夫人」の原作者エマニュエル・アルサンとして、後に一世を風靡したそうだ。どちらも面白い経歴である。

特筆すべきは艦長役のリチャード・クレンナだ。艦の規律と名誉を重んじ、一匹狼のホルマンと対立する役だと思っていると、濡れ衣を着せられ孤立した彼をかばったり、みずから機関砲を握って暴徒に威嚇射撃したりする。そしてクライマックスでは、それまでの慎重な姿勢から一転して戦う艦長に変貌。最後は「あとは俺に任せろ!」とばかりに名誉の戦死を遂げる。
そしてシャーリーや仲間を逃がすため、一人残ったマックィーンが戦うラストシーン。敵を牽制するため、いるはずもない仲間に声をかけながら銃を撃ち続ける姿はあまりに悲しい・・・。最後のセリフは、当時ベトナムの戦場で死んでいった若者の心情を代弁していたのかも知れない。

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