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ボブ★ロバーツ/陰謀が生んだ英雄 (1992)

BOB ROBERTS

監督
ティム・ロビンス
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3.12 / 評価:25件

トランプの登場を予見した映画

  • Masato さん
  • 2019年12月9日 13時38分
  • 閲覧数 108
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

町山智浩の危険なアメリカ映画
なぜか2年間ほったらかしにしてたので、今更鑑賞再開。

この映画は、政治家を追ったドキュメンタリーを模したフェイクドキュメンタリー=モキュメンタリーの形をとっている。主人公はボブ・ロバーツだが、監督の思いが如実に表れているという点で、本当の主人公は、ドキュメンタリー作家や対立候補、黒人記者などの反対側であると思う。

モキュメンタリーとしての完成度は高いし、現在で言われるトランプ的なの以外でも様々な風刺が効いていて、かなりリアリティがあった。兎に角、難しい題材な上に情報量が多くて追うだけでも必死なので退屈にならなかったし、実話のようなリアリティを維持しながらも、映画的な徐々にヒートアップしていく構成も素晴らしく、後半における暴動や事件などの動きはアクション映画さながらの迫力。

本作が、ドナルド・トランプ大統領(以下トランプ)の誕生を予想しているとして言われている点はいくつか存在する。まず、生い立ちが億万長者であるということ。これは、トランプも同じく金持ちの実業家からの政治家への転身であることと共通している。そして、思想面においても、保守的な思想がかなり強いことが劇中でわかる。まず、劇中最初にコンサートで歌う曲の歌詞が「貧しい人たちは何もせずに文句を言う」といった内容であり、金持ち優遇の思想が明らかであり、優遇税制をするトランプとも共通する。

その次に、ワイドショー番組でのインタビューのシーンで、ボブが「60年代は汚点だ」と言ったときに、黒人キャスターが、それはウォーターゲート事件などのことを言っているのかと聞いたところ、ボブは黒人キャスターを指して「違う。君のような人物のことだ」と言う。これは、麻薬や性、公民権運動などの社会運動は罪悪であると言っており、それは憲法に保障されているとキャスターが言うと、「共産主義?」とボブが返した。こうした、一連の保守発言はトランプの過激発言と似ている。

また、このシーンのあとに言う黒人キャスターの言葉が見事に的をついている。それは、ロバーツは自意識がなかった時代から、自ら発言をするようになった60年代の良い点を破壊しようとしている。自由思想に対する反逆的なポーズをうまく演じて注目を得ている。”反逆的保守主義ね”と言った。まさに、トランプも現在のリベラルでポリティカルコレクトネスな世の中に反逆するように立ち振る舞っている。

保守的な言葉で牙をむき、対立演出を行い、ポピュリズムを煽った行動はトランプに限らず、現在の世界的なリベラルに対する保守派の行動パターンと一致する。これは大変先見性のあるシーンで感嘆した。

また、対立候補のペイストが語るシーンで、彼は、人種・女性差別を煽るような演説がうまい。感情に訴える政治だ。しかし、中身は何もない。言葉の端々から胡散臭さがあると言った。こうしたわかりやすいポピュリズムが、Hateでしか考えることができない一部(多数)の大衆を扇動してコントロールしていく。これも、現代のトランプ政治を見事についていて、恐ろしくなってしまうほどだ。

劇中で対立演出を極めた結果、右翼と左翼で大きくアメリカが分断されていくこととなるが、その時にヒートアップして暴力沙汰になったり、もはや宗教家のようにボブ・ロバーツを信じる人などが登場したりして、これは今のオルタナ右翼やシャーロッツビル事件、演説時の暴動などの騒動と似ている部分があった。

また、ボブ・ロバーツは「時代は戻る」という歌を歌う。この映画はボブ・ディランの影響を強く受けており、その真逆の存在としてこのキャラを作り上げたという。そのボブ・ディランには、60年代のカウンターカルチャーを歌った「時代は変わる」という歌があり、それをパロディにしたのが「時代は戻る」なのだが、この歌の意味とは、60年代以前のアメリカに戻るということを意味している。トランプがよく発言する「Make America Great Again」という言葉の”Great Again”の意味は、政策、思想、発言などから見て、60年代以前のアメリカ社会のことを意味していると思われる。これも一種の共通点だと言えよう。

トランプ以外の点で、今までのアメリカ政治に対しての危険性を呈した部分で、ボブ・ロバーツは、学校に赴き、憲法違反として宗教と教育の分離をした現在に対するアンチテーゼの歌を歌ったり、フセインなどの軍事的介入に対して、存在を必要以上に悪として捉えて、軍事予算を確保しようとしているとボブ・ロバーツを批判していたりなどといったシーンもあった。

以上のことから、トランプのような政治家が現れることを予見している映画だということがわかる。トランプ大統領がこの映画を真似たのか、はたまた偶然なのかが一切わからない。前者でも後者でも、あまりにもうまくできすぎていて怖いし、こんなことが本当に起きてしまうのかと思ってしまう点で怖い。

本作は、こうした政治家に対する警鐘として描いたと思うのだが、本作が20年以上も前に作られたのにもかかわらず、そのままの通りに起きてしまったという恐怖がある。

私たちは、知識を武器として、言葉に惑わされずに政治を見ていく必要がある。これは、ヒトラーの時からずっと繰り返されている。目に見えるものすべてが正しいものではなく、そのものに従順になってはならない。すべてにおいて懐疑的にならなければならない。

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