レビュー一覧に戻る
マジェスティック

マジェスティック

MR. MAJESTYK

103

アニカ・ナットクラッカー

4.0

強すぎる農場主、犯罪者集団を撃滅す

ひさしぶりにチャールズ・ブロンソンのアクション映画を観たいと思っていたら、レンタル店に1974年のアメリカ映画『マジェスティック』があったので即座に借りてきた。テレビ初放映は1978年10月16日の月曜ロードショー。「凄絶!火の玉ブロンソンの復讐爆弾炸裂・マジェスティック」というテレビ題がついていた。ブロンソンの声はおなじみ森山周一郎。私は放映当時、後半のアクションシーンを断片的に見た記憶しかないので、最初からじっくり観れたのは嬉しいことであった。 本作の劇場公開は1974年11月9日(土)。一週間前の11月2日(土)には「狼よさらば」が公開されており、当時のブロンソン・ファンはどちらを観ようか嬉しい悲鳴をあげたに違いない。重たい後味が残る「狼よさらば」に対して、『マジェスティック』は肩の力を抜いて楽しめる娯楽アクション。共通しているのは「一般市民が理不尽な犯罪から身を守るには、警察に頼ってはいられない。みずから武力を持って戦う必要がある」という、西部開拓時代から変わらぬアメリカの哲学だろう。 ストーリーは単純明快だ。テキサス州でスイカ農園を経営するマジェスティック(ブロンソン)が、収穫のためにメキシコから来た労働者を雇うのだが、労働者の受け入れをめぐって地元のヤクザ者コーパス(ポール・コスロ)から嫌がらせを受ける。理不尽な罪で逮捕された彼が、留置場で出会った犯罪王レンダ(アル・レッティエリ)から深い恨みを買ってしまい、ヤクザ者と犯罪王の両方を敵に回すことになる。 メキシコ人を差別してトイレも貸さないガソリンスタンドの店主、「メキシコ人ばかり雇うのは白人差別だ」とほざくヤクザ者、弱者の味方にはならない警察、金の力を背景に法の裁きから逃れる犯罪王・・・。本作で描かれる社会のゆがみは、犯罪都市の恐怖を描く「狼よさらば」とはまた違った、70年代アメリカのひとつの断面であろう。メキシコ人との関係などは、もしかしたら今も続いている問題なのかも知れない。 対照的に、主人公のマジェスティックは男の理想を絵に描いたような存在だ。原題を「ミスター・マジェスティック」といい、苗字の前に敬称が付いている。「主人公は紳士です。(その紳士をいったん怒らせると怖いんだぞ)」というメッセージが込められているのかも。本作のブロンソンは悪党の嫌がらせに対して、ギリギリまで我慢する。しかし収穫したスイカをマシンガンで銃撃され(飛び散る赤い果肉が、死体を連想させてドキッとさせる)、わずかに残ったスイカの出荷を手伝った労働者がむごい仕打ちを受けて、ついに堪忍袋の尾が切れる。 ヤクザ者も犯罪王も、マジェスティックの真の姿を知らなかった。彼はベトナム戦争で勲章を受けた経験があり、山岳地帯に繰り出してはライフルで狩りを楽しむ戦士だったのだ。犯罪者集団から狙われていた彼が、聡明なメキシコ人女性ナンシー(リンダ・クリスタル)の助けを借りて反撃に転じると、あとは痛快なアクション場面が連続する。 敵の包囲網から逃れたブロンソンが、トラックの荷台に伏せながら銃をぶっ放し、敵の背後に回りこんで車ごと突き落として炎上させる。クライマックスは森林の山荘を舞台にした狙撃シーンだ。前半の、マジェスティックの乗った囚人護送バスを犯罪王の部下が襲撃する市街戦の迫力も凄い。突然の銃撃戦に驚く通行人の反応がリアルだった。 チャールズ・ブロンソンはベレー帽にデニムの上下という野良着ファッション。留置場で知り合った黒人から「無茶をするなよ」と声をかけられて、ウィンクしてニカッと笑う表情がいいのだ。「狼よさらば」のラストでも同じような顔をするが、当時のブロンソンのトレードマークだったのかも知れない。銃撃だけでなく、格闘シーンでの素早い身のこなしには惚れ惚れする。 悪役レンダを演じるアル・レッティエリは「ゴッドファーザー」でコルレオーネ一家と敵対するソロッツォ役や、「ゲッタウェイ」の敵役などでおなじみだ。75年に亡くなったというから『マジェスティック』は晩年の作品ということになる。凶悪な面構えにプロレスラー並みの体格で、本気で戦ったらブロンソンにも勝つんじゃないかと思わせる迫力があった。 格闘、カーチェイス、銃撃戦と、アクションの見せ場が満載であるが、感心したのは「決してやり過ぎない」という事だ。警官や犯罪者以外に巻き添えで傷つく者はいない。リンダ・クリスタルやリー・パーセルといった女性キャラが危害を加えられるシーンは全くない。メキシコ人の労働者で酷い目に遭うのは一人だけ。ヤクザ者のコーパスも命を救われる。逆に、最近のアクション映画は大げさでリアリティに欠けると感じるほどだ。本作のレビューの平均点はちょっと低すぎるのではないかと思う。

閲覧数2,037