作品レビュー(3件)
- kih********
5.0点
これを見るとアントワネットは悪人ではない。むしろ同情すべきヒロインのようだ。これまで、『マリー・アントワネット』(2006年アメリカ映画)、『マリー・アントワネットに別れをつげて』(2012年フランス映画)を見ているが、カメラの位置が違うから当然印象も違う。私にはこれ『マリー・アントワネットの生涯』(1938年アメリカ映画)が一番いい。古い白黒フィルムがいい。 ヴェルサイユ宮殿のラブロマンスだから映画にはもってこいの題材だろうけど、だから一通りの“ストーリー”は知っておきたいけど、映画の技術競争が先に出ると、イメージが損なわれかねない。ヒロインのラブストーリーは如何様にも創出や脚色ができるだろうからそれはそれとして楽しめるけど、豪奢な宮殿や衣装などを強調するのは、次第に飽きが来るし、白けもする。 そんなことより、フランス革命における彼女の位置づけを知りたい。本作では、王家一族のお家騒動という印象を強くしてある。『……生涯』では、アメリカ独立戦争への援助で国内財政が苦しくなったという国政ミスの印象が強い。『……告げて』は宮廷家庭教師に見えた逃亡劇でしかないから、革命には触れない。仕方がない。いずれもマリー・アントワネット物語なのだから、これで歴史のお勉強をしようというのは無理な注文というもの。では、[フランス革命]とか[フランス革命の人々]とかいう映画はないものか。
- bakeneko
5.0点
このレビューにはネタバレが含まれています。 - gar********
4.0点
フランス革命の犠牲となった王妃マリー・アントワネットの生涯を、MGMが総力を挙げて製作した歴史大作。 この映画に似合う言葉は、ただ一つ『豪華絢爛』です。本物のヴェルサイユ宮殿の鏡の間の2倍の大きさのセットを作ったことに始まり、ノーマ・シアラー演じるマリー・アントワネットから端役の宮廷人に至るまで、約5000人の出演者と二匹のプードルのためにドレスからカツラや扇子、そしてハンカチのような小物に至るまですべてヨーロッパで特注、縫製もミシンではなく、手縫いという途方もない手間とお金が掛かっています。はっきり言って、同じ大作でも『タイタニック』も裸足で逃げ出すほどの超大作です。 映画の出来としては、歴史の流れを描くのが下手だなという印象があります。アントワネットが巻き込まれる首飾り事件から一足飛びにフランス革命勃発…という展開になってしまったので、もっと革命の背景を入れないと歴史映画としてはイマイチです。 しかし、そんな欠点を補ってあまりあるのがアントワネットを演じたノーマ・シアラー。淀川長治さんは、この人を「女王から娼婦まで演じられる人」と評しています。端正な顔立ちで、綺麗な青い瞳を持ち、女性が見てもチャーミングでコケットリーな魅力で1920年代から30年代に『MGMのファーストレディー』『クィーン・ノーマ』と言われるほどの大女優だった人です。その人気は、ガルボをもしのぐほどだったそうです。まさに、マリー・アントワネットを演じるのにこれほどふさわしい人はいません。 しかし、彼女は美貌だけの女優さんではありません。彼女の確かな演技もこの映画の見所です。映画では、フランスに嫁ぐ14歳から断頭台で処刑される36歳までを一人で演じます。普通実年齢より若い役というのは、ある程度年齢がいった女優さんが演じると違和感があります。リアリティーという意味で若さを出すのはとても難しいものです。しかし、シアラーの持つ雰囲気は、実年齢を超越しています。決して若々しいとは言えないのですが、若い娘がここにいるのだと見る者に思わせる力があると思います。そして、映画の見せ場であるフランス革命に巻き込まれてからは、さすがです。特に夫に死なれた後最愛の息子と引き離される所は、幸せな家族のシーンを見ただけに胸が詰まります。彼女の演技とともに、息子役の子役の演技も泣けてきます。 途方もない豪華絢爛な映画に、大スターの演技が華を添える歴史大作。
スタッフ・キャスト
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受賞歴
ヴェネチア国際映画祭第6回