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まわり道

まわり道

FALSCHE BEWEGUNG/THE WRONG MOVEMENT/FAUX MOUVEMENT

100

********

4.0

観察、体験、書くこと

1974年。ヴィム・ヴェンダース監督。作家をめざす青年の、元ナチスの男とその孫娘や女優、詩人らとの旅。ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』を元に、書くことをめぐる由緒正しい映画です。 映画製作当時の文脈を濃密に意識した政治映画、としてみたほうがわかりやすいかも。主人公たちの会話はしきりに「政治と文学」「政治と自然」に向かいますが、それはドイツの戦後の総括にみえてくる。資本主義が芽生える時期のゲーテの書くことへの悩みとはまた別の、戦後ドイツ青年の書くことの悩み。 大まかにいえば、「観察すること」→「体験すること」→「書くこと」のそれぞれの段階に苦しみがある。一歩前進するたびに失われるものがあり、それを強烈に意識する主人公。「観察」から「体験」へは性への耽溺と引き換えの裏切りがあり、「体験」から「書くこと」へは作品と引き換えの別れがある。そして「失われたもの」に耐えられずに、当初の自由な状況へと戻るために旅を続ける主人公。 車や電車に乗っていると雨が降る映画でもあります。

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