無意識の暗殺者
- 文字読み さん
- 2010年11月26日 23時36分
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1941年。フリッツ・ラング監督。スポーツとしての狩猟が趣味のイギリス人(ウォルター・ビジョン)は獲物を殺すことではなく近づくこと自体を目的としていたが、獲物として狙ったヒトラーを殺そうとしたとしてナチスのゲシュタポに捕まってしまう。イギリス政府の命令による暗殺だという書類への署名を迫られて拷問されるが、なんとか抜け出してロンドンへ行く、しかしゲシュタポ(ジョージ・サンダース)が追いかけてきて、、、という話。
そもそもヒトラーを狙っていたことは本当であったため、イギリス政府に助けを求めると外交問題になって宥和政策からドイツに引き渡されてしまうと恐れる男が、一人で逃亡を続けるのですが、サンダースに追い詰められて「そうだ、今、わかった、俺は無意識にヒトラーを殺そうとしてたのだ」と叫ぶシーンがすごい。他人によって発見される私の無意識。「アンコンシャス・アサシン(無意識の暗殺者)」というサンダースのセリフから、まったく関係ないけど夏目漱石「三四郎」の「アンコンシャス・ヒポクリット(無意識の偽善者)」を思い出してしまいました。漱石の方は男である主人公が女性をそう名づけているだけで、女性がその無意識を引き受けていくわけではありませんので意味は違いますけれど。
逃げている男は宥和政策のイギリスの大人たちには相手にされず、船の給仕の少年や、少女のような娼婦(だと思う。ジョーン・ベネット)に助けられるのですが、ベネットとの別れが地下鉄や橋の上なのは明らかに前年の映画「哀愁」の引用でしょう。
ラストで本当の暗殺者になった主人公がベルリンの街へと消えていくですから、戦意高揚映画であることは間違いないのですが、とてもそれだけでは語れないよい作品でした。
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