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ミイラの幽霊 (1959)

THE MUMMY

監督
テレンス・フィッシャー
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2.50 / 評価:2件

ミイラ純愛物語。

  • 二酸化ガンマン さん
  • 2015年5月26日 0時09分
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    • 総合評価
    • ★★★★★

ヘンな邦題です。怪奇映画におけるミイラとは一回死んで蘇った元祖ゾンビみたいな奴なわけで、要はそれだけで恐い存在なのですが、さらに加えて「幽霊」とはどういう事でしょうか。この「複雑骨折後の脱臼」または「民事再生後の破産手続」みたいなタイトルは忘れていただき、今回は英国ホラーの名門ハマーフィルムによるミイラ映画第一作についてです。
19世紀末。ここエジプトでは、英国の考古学者親子が王妃のお墓を発掘中です。息子のピーター・カッシングは足を怪我してテントで静養中。「カイロ暑いなあ。もうイギリスにカイロ。なんてね。」彼が暑さをものともしない寒いギャグを言っている間に、父親と伯父はいよいよ墓に入ろうとします。
「ちょっと待った!」往年の人気番組「ねるとん紅鯨団」のような展開で突如現れたエジプト人。
「おまえら、そこに入ったら呪われるあるよ。そしたらもうお国のフィッシュ&チップスも食えないあるよ。それでよいあるか?」
当然、英国人はアラブ人の忠告など聞く耳持ちません。「うるさい。おれは胆石があるからどうせ脂っこいものは食えないんだ。ほっとけ。」父親はそう叫んで墓に入り、そこで意識不明になってしまいます。一体何が起こったのでしょう。胆石が原因でないのは明らかです。
数年後。母国の病院で意識を取り戻した父親は、息子に言います。
「ミイラが来るだ。ミイラがおらたちを殺しに来るだよ。」
その夜、病院の近くで馬車が大きな荷物を沼に落とします。そこに現れたのがあの時のエジプト人です。彼が古代エジプト語と思しきテキトーな呪文を唱えると、なんたる事でしょう。沼からミイラ男が出現したのです。ミイラとは遺体が腐敗する前に乾燥させて作るものですが、沼などに浸かって大丈夫なのでしょうか。
おっと、心配をしている場合ではありません。ミイラ男はエジプト人の命令で、発掘に関わった人間たちを殺してゆきます。
ミイラを演じるのはクリストファー・リーです。「フランケンシュタインの逆襲」のモンスターメイクは壮絶に怖かったのですが(メイクがあまりにも怖いので、彼はスタッフと一緒に食事もさせてもらえなかったそうです。)、この作品でもその長身を生かして不気味かつ存在感あふれるミイラ男を熱演しています。
ミイラの正体は、王妃アナンカに恋をしていた高僧カリスでした。彼は死んでしまった王妃を蘇らそうとして発覚し、舌を抜かれた上生きたままミイラにされてしまったのです。
そう、カリスは古代エジプトの高僧という身分的にも高い地位にいたインテリです。そこが、いかにも高校を卒業し地元で就職したっぽいゾンビとの違いです。やはりクリストファー・リーには貴族のドラキュラといいこの高僧ミイラといい、高貴なモンスターが似合います。
カリスはついにカッシングの元に現れますが、悲鳴を上げた彼の妻を見て襲撃をやめてしまいます。なんと、カッシングの嫁は彼が恋した王妃アナンカに瓜二つだったのです。ミイラは顔が包帯でぐるぐる巻きにされた顔面綾波レイ状態なのですが目だけは光っていて、この目が彼女を見る時に実に悲しそうになります。さすがは御大、モンスターになっても目で演技をしています。
カッシングに正体を見破られたエジプト人はもう一度カリスに彼を襲わせますが、またも嫁に阻止されます。エジプト人は「その女を殺せ」と命じますが、それが「殺人魚フライング・キラーってイマイチだよね。」とジェームズ・キャメロンに向って言うのと同じくらいのNGワードである事を知らなかった彼は反対にカリスに殺されてしまいます。
カリスは王妃クリソツの嫁を抱いて逃走し例の沼地にやってきます。そして沼に入ってゆこうとします。その時、カッシング嫁はミイラが自分を王妃と思い込んでいる事に気づきました。彼女は王族っぽい威厳を最大限に発揮して命じます。
「カリスよ、わらわを降ろすのぢゃ。」英語かよ!
しかし、カリスはこの女王様プレイに反応しました。彼は嫁を降ろし、沼を囲んでいた村人たちの一斉射撃を受けて沈んでゆきます。ああ、王妃に叶わぬ恋心を抱いたミイラの運命はここに尽きるのでありました。ていうか、もうとっくに尽きてるか。
ハマーの他作品の例にもれず、これもセットなどの美術が見事で低予算映画とは思えない完成度を示しています。ハマーの特に初期作品は当時なりのショックを盛り込みながらも、基本的に上品です。重厚な俳優陣と演出が醸し出すクラシカルな雰囲気といい、やはり英国ならではの格調が漂っているのはさすがです。そういうホラー映画はすっかり無くなってしまいました。
まあ最近はTVドラマにもゾンビがはびこる世の中です。ゾンビという平民のモンスターが起こした民衆革命によりバスティーユ監獄は堕ち、ハマーのような「ホラー映画の貴族階級」はみなギロチンにかけられてしまった、と見るべきなのでしょうか。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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