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右側に気をつけろ

右側に気をつけろ

SOIGNE TA DROITE/KEEP YOUR RIGHT UP

81

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5.0

世界をつくる方法

美しいゴダール映画です。小説と音楽と演劇と映画のアナロジーを描きながら、「地上にひとつの場所を」つくりだそうとするそれぞれの営みをユーモラスに描いています。「期待に方向はない」というように、その場所にいく手段は決まっていない。それぞれが無方向に生きればいいのだという力強いメッセージです。何度も描かれる、窓の向こうに見える美しい空がその場所なのです。 小説は孤独な男の妄想と一つの光で、音楽は密室の男女二人のコラボレーションで、演劇はロミオとジュリエット風に悲劇の恋愛を高々と謳いあげる男女で、映画はゴダール自身も載った飛行機のなかの集団的狂騒で描かれています。文字、音、身体、映像という、世界をつくるために使う道具の違いをうまくとらえています。(キットラー「グラモフォン・フィルム・タイプイライター」ちくま学芸文庫、をご参照ください) 小説を書こうとする男がテープを聞きながら妄想する場面やゲーテの最後の言葉を気にすることなど、タイトルを忘れてしまいましたが、キットラーが引用していた小説とまったく同じです。たぶん、ゴダールも同じ小説を念頭に置いている。例によって一度も説明しませんが。 不親切すぎるくらいぶっとばしていますが、基本は、窓の外の美しい世界に到達するために、自分だけの世界をつくりあげようという、例によって映画制作過程を題材にした映画です。世界をつくる映画。とにかく美しい映像をご堪能あれ。

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