レビュー一覧に戻る
水の中のナイフ

水の中のナイフ

NOZ W WODZIE/A KNIFE IN THE WATER

94

一人旅

4.0

ロマン・ポランスキーの監督デビュー作

TSUTAYA発掘良品よりレンタル。 ロマン・ポランスキー監督作。 週末をヨットで過ごすため湖へ向かう夫婦と、偶然出会い夫婦と行動を共にすることになった若者の心理を描いたドラマ。 ヨットという閉鎖的な空間。夫婦の穏やかな関係に部外者である若者が入り込むことで三人の心情に変化が訪れていく。そうした意味では同監督の『袋小路』に似たテーマ性がある。本作の鍵となるナイフの見せ方が抜群に上手い。若者が取り出すナイフは周囲から明らかに浮いた存在。ダーツのようにナイフを投げる場面や、指と指の間にナイフを突き刺していく危険な遊びに、これから何か起こりそうな気配が漂う。湖に囲まれた開放的な風景から一転、ナイフが画面の主役となる。鑑賞者の意識の対象を自然に一本のナイフにもっていかせる演出は見事で、途中からナイフの存在だけが妙に気になって仕方がなくなるのだ。三人の内の誰かがナイフに触れるたび、妙な胸騒ぎを覚えてしまう。 ナイフは人間の隠された本心を象徴しているように見える。ナイフの鋭さが、惰性的な夫婦の関係や若者の本心を抉り出しているようだ。そして、水に落ちるナイフが物語を大きく動かすきっかけとなり、三人の行動と心情の転機を目に見えるかたちで浮き彫りにする。 居心地の悪さや不快感を感じさせる演出も素晴らしい。特に、若者と妻の関係性は嫌な感じ。偶然目撃してしまう妻の裸体。若者はすぐに目を逸らす。だがそれだけで、若者と妻の間に流れ始める微妙な心情を、これまた確信性に欠ける“気配”だけで表現している。 不安定な風と空模様が、三人の揺れ動く心を象徴しているようだ。

閲覧数1,283