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ミス・ブロディの青春

ミス・ブロディの青春

THE PRIME OF MISS JEAN BRODIE

116

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4.0

ネタバレ学園モノの秀作

 主演は2人居る。1人はミス・ブロディ役のマギー=スミス氏、今は「ハリー・ポッター」シリーズで魔法学園のミネルバ校長役で有名だろう。この頃はまだ30代前半と若々しく、「進歩的」な教諭として登場する。  もう1人はブロディ先生を慕う女生徒グループのリーダー・サンディを演じるパメラ=フランクリン氏、日本ではホラー映画「ヘルハウス」で少女霊媒師フローレンス役のイメージが強いだろうと思う。「ミス・ブロディ」ではまだ役柄通り17・8歳くらいである。(余談1)  舞台は1930年代のスコットランド、首府エジンバラのトラディショナルな風景の中にある名門女子校で物語が展開する。制服はグレーを基調としており、古都エジンバラの古い建築や石畳によく調和している。現在の日本でも私立のミッション系高校で採用されていそうな上品なデザインだ。  そんなシックな雰囲気を乱す存在が、明るくカラフルな服を好んで着る主人公ブロディ先生である。彼女の情熱的な授業と歯に着せぬ言動に生徒たちも慕うようになり、特にサンディー達数名のグループはファンクラブか親衛隊のようにブロディ先生に従う。  溌剌としたブロディ先生には、美術の男性教諭と恋仲だったが、美術教諭は優柔不断なのでプロディは音楽の男性教諭と付き合うようになる。傷心の美術教師はブロディの身代わりに女生徒のリーダー格サンディをヌードモデルにして絵を描いていくうちにサンディと関係を持ってしまうが、心はブロディーにあり、このことでサンディーは傷つく。  伝統格式のある学園をあずかる保守的な校長先生は、ブロディを学園の秩序を乱す元凶と見なし追い出そうと画策する。ブロディの立場は次第に悪くなるが、生徒たちの支持を背景に抵抗しようとする。しかし頼みの綱のサンディーは豹変していた。  ここまでだと、日本にもよくある学園ドラマである。最近のTVで同様の雰囲気の物語はよく放送されているし、昔なら日活ロマンポルノのネタになりそうな素材である。たぶん、日本では単なる愛憎劇で済ませてしまうだろう。  この作品には少し社会的な素材が絡んでくる。一見すると、生徒を抑圧する窮屈な伝統と権威からの解放者としてブロディ先生は登場するが、実はファシスト・ムッソリーニの崇拝者であり、(余談2)頑なで独り善がりな姿勢で教師としての立場を逸脱し一種のカルト勢力の指導者のような振る舞いで生徒たちを感化させていく。情熱的な行動力と刺激的な話術、これに男性教師たちが惹かれ、サンディ達は慕うのだが、物語の進展とともにプロディの偽善が次第に明らかになるのが見ものだ。  素晴らしいのは、サンディ役のP=フランクリン氏である。最初はリーダーシップがとれる利発な女の子というだけだったのが、様々な節目をきっかけにブロディたちの偽善を看破し成長していく様を演じている。  サンディの成長とともに、知的な大人だった美術教師が頼りない男に成り下がり、プロディは思い込みの激しい勘違い人間として馬脚を表し、ラストは思ったほど生徒から慕われていなかったことに愕然とし、サンディに向かって負け犬の咆哮をする。マギー=スミス氏とP=フランクリン氏の火花散る演技と、一種の主客転倒劇がこの映画の醍醐味だ。    興味深いことに、保守の校長先生はプロディのファシズムは非難しないし気付いていないようだった。保守派校長が気に入らなかったのは、プロディの本質ではなく、伝統と権威に反する派手な格好と男性関係だった。保守はどこも同じか。   (余談1)パメラ=フランクリン氏は子役で脚光を浴びたが、「ヘルハウス」以降は恐怖映画に2作ほど出演してその後は判らない。日本ではまだ「ミス・ブロディ」はDVD化されていないようだが、イギリスで販売されているDVDでは特典映像に解説者として出演している噂を聞いた。だから健在なのだろう。  この作品では眼鏡をかけた女高生姿のパメラ=フランクリン氏が見れる。 (余談2)閉塞感ある当時の社会状況を打開しようと2つの思想が知識人を中心に流行っていた。1つはコミュニズムであり、もう1つはファシズムである。ブロディ先生の存在はそれを表している。  物語構成としても、進展とともにプロディ先生の独善と偽善を観客に解りやすく浮き彫りにしていくのに、ファシストという設定は効果的だ。

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