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路(みち)

bakeneko

5.0

ネタバレトルコ美人は日本人が見ても美しい

トルコのユルマズ・ギュネイが苦心惨憺して創り上げた作品で、(本人は獄中だったので)演出はシェリフ・ギョレンに委託しています。トルコの様々な問題と人間ドラマを、出獄した5人の囚人の帰郷の5日間のエピソードを通して描いた“社会&人間ドラマ”の力作であります。 本作は、当時のトルコの民族問題や社会的問題、因習や偏見といった社会的なテーマを鋭く捉えた作品ですが、映画の中心となっているのは“人間性への渇望”であります。 トルコ政府が隠しておきたい=実際のトルコ社会が虚飾無く描かれていて、囚人同士の友情や同朋意識等の男性同士の感情は、万国共通の素朴な善意を見せてほっとさせますが、男女間の愛情の在り方が、厳しい貞操観念や因習&社会規範によって窮屈な状況にあることが分かります。そして、国家による規制よりも“一族としての法”を優先する気質や、“自身や夫婦の幸せ”よりも“家”を一義に捉える感覚は昔の日本人社会に近い印象を受けます。 そして、人間性を発露しようとする男女と因習&家制度の葛藤が提示する幾つかの悲劇は(トルコだけではない)世界共通の“人間社会の冷酷さ”を見せて共感をもたらすのであります。 シンプルで無作為的な演出方法で語られる映画ですが、厳しい自然と特異な文化風俗が新奇さと緊張感をもたらしていますし、物語で示される“わかりやすい葛藤の図式”は文化の違いを超えて力強いドラマ性を訴えて来るのであります。 トルコ&イスラム社会の現状と問題を勉強できると共に、骨太なドラマを堪能する作品で、本格的で重厚な物語が好きな方にお勧めの映画であります。 ねたばれ トルコの列車内には痴漢はいなさそうだな(御免なさい)。

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