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路(みち)

一人旅

4.0

個人と社会の狭間で揺れ動く魂

第35回カンヌ国際映画祭パルムドール。 ユルマズ・ギュネイ監督作。 トルコの刑務所を仮出所した5人の男の故郷までの旅路とその後を描く。 何よりも優先される一族の尊厳や女性の地位の低さ、クルド人問題など、イスラム国家トルコが抱える社会の暗部を鋭くえぐり出しているが、5人それぞれのエピソードは小間切れに描かれているため物語に一貫性がないきらいがある。 社会が正しいと見なすものと個人が望むものが乖離してしまっている。独裁や法規がもとで個人の自由や望みが実現しないこととはまた異なる。個の集合体としての社会内部に存在する慣習や掟といった目には見えない暗黙の縛りが個人の願いを実現させないままに消失させてしまう。ある意味、前者より不変性が高く、たちが悪い。社会と、社会の構成員である個人はお互い切り離すことのできない同質のものと見なすことができるからだ。終盤、男が結婚指輪を外そうとするもその動きを止め、しっかりと嵌め直す仕草が印象的だ。社会が定めたルールに、一瞬の反抗と自身の望みを体現した瞬間だった。

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