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ミッション (1986)

THE MISSION

監督
ローランド・ジョフィ
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  • みたログ 703

3.50 / 評価:236件

「少女が拾ったもの」

  • hoykita194 さん
  • 2009年3月16日 17時14分
  • 閲覧数 1473
  • 役立ち度 22
    • 総合評価
    • ★★★★★

 原題は「THE MISSION」。(キリスト教の)布教とか伝道という意味だ。
 キリスト教の伝道という問題に、真正面から挑んだ作品である。
 志を感じる映画だ。
 傑作だと思う。

 この映画は、アルタミラーノ枢機卿が、ローマ教皇に現地報告をするという形をとっている。冒頭、終幕、後半に、登場する。
 とくに最後は、エンドロールが終わったあとに、報告を書き終えた枢機卿が、ほんの1、2秒、無言で観客を直視するという、印象的なシーンで、全編を閉じる。
 枢機卿は、カトリックで、教皇に次ぐ高位聖職者である。

 1750年。
 現在のアルゼンチン、パラグアイ、ブラジル国境。パラナ川上流域のジャングル地帯。イグアスの滝付近。
 当時、スペイン支配下の植民地だった。現在のパラグアイの首都アスンシオンに近い。

 冒頭。
 十字架に縛り付けられた半裸の男が、川に流され、そのままイグアスの滝を落下して、滝壺に消える。イグアスの滝の映像が、圧巻。
 イエズス会の宣教師である。

 最後。
 川の浅瀬に、村の教会にあった大きな十字架が沈んでいる。そのすぐ上の水面に、村人が制作していたバイオリンが浮いている。生き残った一人の少女が、バイオリンだけを拾い上げて、仲間の子供たちが待つカヌーに乗り込み、遠ざかっていく。

 イグアスの滝付近のジャングルには、グアラニー族が住んでいる。
 イエズス会の宣教師たちは、文字通り命がけで、先住民の布教につとめていた。
 部下の死を知ったガブリエル神父は、滝の岸壁をよじ登り、みずから集落におもむく。

 神父が吹くオーボエの音色が、グアラニー族の警戒心を解いた。

 彼らの不信は、奴隷狩りにあった。
 ひと儲けをたくらむスペイン人やポルトガル人が、彼らを捕縛しては、売りさばいていたのだ。
 元傭兵で奴隷商人のメンドーサも、その一人だった。

 ところが、メンドーサは、恋人をめぐる決闘の末、弟を殺してしまう。
 罪の意識で無気力になってしまったメンドーサに、手をさしのべたのが、ガブリエル神父だった。 
 改悛し、神父に従ったメンドーサは、過去の贖罪のためにみずからに苦行を課し、それによってグアラニー族からの信頼を徐々に回復していく。

 うち解けたグアラニー族は、心やさしく勤勉で、また勇敢な人々だった。
 布教が成功し、宣教師たちとグアラニー族の手で、新しい村ができた。教会も立った。
 まるで地上の楽園のような、平和な村ができた。

 ところが。
 スペイン、ポルトガル二国間の領土の線引きで、村は、ポルトガル領に編入されることになる。
 村を訪れたアルタミラーノ枢機卿は、そこに、伝道の理想を見る。
 しかし、枢機卿の目的は、村人の移動を説得することだった。
 それは、教皇庁の絶対的な意向だったからだ。

 その背後には、スペイン、ポルトガルの植民地政策に逆らえない、教皇庁の内部事情があった。さらに、突出したイエズス会自体の活動や、彼らの現地民との融和政策に対する不満と反感が、あった。

 ポルトガルは、奴隷売買を容認していた。
 村を出ることも、奴隷になることも拒んだグアラニー族は、現地軍との戦いを選ぶ。

 宣教師たちは、正義と信仰との間で、選択を迫られる。
 メンドーサを含めた宣教師たちは、あえて非戦の教えに逆らって、グアラニー族に荷担する。
 ガブリエル神父は、キリストの教えを守り、無抵抗を貫く。

 グアラニー族殺戮の背後には、国家と宗教との対立がある。
 そして、イエズス会自体の存亡の危機が控えていた。

 枢機卿は、教皇庁の意向に従うしかなかった。逆らえば、イエズス会自体がつぶされる。会を守るには、村は、見捨てるしかない。
 しかし、枢機卿は、キリストの教えに照らして、それが正しい選択だったとは、確信できない。
 真実は、宣教師たちの側にある。
 それが、枢機卿の、ローマ教皇への報告だった。

 この映画では、さらに、大切な問題が提出されている。
 それは、伝道そのものの、可否である。
 裸の少女が拾っていったのは、十字架ではなく、壊れたバイオリンだった。

 イエズス会の設立(1534)以来、敬虔な宣教師たちは、純粋にキリストの福音を伝えるために、世界の果てまで出かけていった。そのために、数多くの宣教師が殉教した。
 しかし、未開の地域への布教は、彼らの意に反して、つねに次のような問題を伴う。
 ひとつは、文化侵略の側面をもつこと。
 もうひつは、政治経済活動とセットになり、富の収奪を伴うこと。
 伝道は、ほんとうに福音なのか。

 映画後。
 事件から、23年後。
 1773年。
 教皇庁は、ヨーロッパ諸国の圧力に屈し、イエズス会の活動を禁止する回勅を出す。
 イエズス会は、一部の国をのぞいて、事実上、活動停止になる。

詳細評価

物語
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演出
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音楽

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