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港のマリィ

港のマリィ

LA MARIE DU PORT

97

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5.0

揺れる少女の強い視線

1949年。マルセル・カルネ監督。シェルブールの企業家(ジャン・ギャバン)は美しい女性と同棲しているが、近くの小さな港に住む女性の妹(ニコール・クールセル)が気になり始める。少女から大人になりかけの妹は田舎からの脱出を思い、女たらしの男は用もないのに船を買って港にでかける口実をつくる。果たして二人の結末は、という話。 女たらしといえばジャン・ギャバン。この映画では彼が少女に翻弄されるというのがミソです。ボーイフレンドには「恋愛なんて駆引きで、何も残らない」とスレたことをいう少女だが「今ここ」から抜け出したいという以外、自分が何を求めているのかわかっていない典型的な「大人になりかけ」。その揺れ動きと強い視線にギャバンがまいってしまう。 同棲している女性とは倦怠期に入っているんですが、退屈な日常を彼女は別の世界へと逃れようとし(別れ、旅行、他の男)、ギャバンは同地に留まって妹との結婚を考えようとする。陸を離れる船が「女性との口実」でしかないことも含めて、どうも留まることがよいことだ、という考え方で一貫しているようで気になります。自由なギャバンの自由さが妹には魅力になっていないし。姉とは結婚に失敗してお互いに夢を見るだけの退屈な日常を招いたが妹とは結婚へと向かうという展開は、「結婚がいちばん」という根拠のない考え方を強固にするような。 とはいえやはり少女の、見据えているものが分かっていないにもかかわらずとても強いまなざし、はすばらしいです。この少女が本当は何を考えているのかまったくわからない。たぶん少女本人にもわかっていない。もちろんクローズアップになるのはそうした彼女のの視線だけです。成りゆき任せのジャン・ギャバンが反応するのは当然だ。 ちなみに、葬式から始まり結婚式の予感で終わるというお約束にもなっているし、同じ場所での撮影で反復と差異を描こうとしているし、90分と短いし、映画のなかに映画がでてくるし、安心して見られる映画です。

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