極めて良質の戦意高揚映画
- kon***** さん
- 2017年7月8日 11時44分
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- 総合評価
今の時代の鑑賞にも十分堪えうる、極めて良質の戦意高揚映画だと思います。
今に至るも「絶対悪」とされるナチス・ドイツとの戦いにおいて、未だ勝利の目途が立たぬ段階で、必死に抵抗する意思を込めて造られたこの作品を、ウィンストン・チャーチルは「敵の小艦隊一個分を破壊したくらいの戦力がある」と評したそうです。
それなのに、戦意高揚というだけでマイナス評価を下したり、反戦映画だなどと見当違いの解釈をほどこして納得しようとする人達の平和ボケぶりには、大きな違和感と苛立ちを覚えます。
この映画では、「贅沢はステキだ」を地で行くような生活をしていた中年夫婦でも、悲痛な数々の戦災体験を経て、なおかつ「くじけません勝つまでは」とばかりに、さらなる困難に立ち向おうとするところまでが描かれます。そこから先の見通しは、まだ誰も持ち合わせていなかったのです。そうした不安と緊張感はいかばかりであったことか。
よく引き合いに出される地下壕の紅茶のシーンにしても、緊張感を欠くせいでもなく、戦争を軽く見せようとする意図からでもなく、どんなときにも自分たちの生活スタイルを守ろうとする、頑固でしたたかな英国人気質を浮き彫りにするエピソードなのだと思います。
この映画のもう一つのテーマは、階級制度の弊害打破ということでしょう。
今ではもう考えられないことでしょうが、当時はまだ貴族階級の人がけっこう威張っていたのですね。我が国では少し事情が違いますが、戦後のある時期、古い考えを批判するのに「封建的」という言葉を盛んに使いました。しかし、その言葉もめったに使われなくなりました。
いちばん賛否が分かれそうなのは、終わり近くの牧師さんの説教の内容でしょうね。私自身は異教徒ですが、それもアリだと思います。つまり、唯一の正解などというものはない、というのが私の見解です。
そういう情況で話をせねばならぬ立場に置かれた聖職者は、一人一人がその器量に応じて思うところを真摯に述べるしかなく、受け止める側も、それぞれの器量に応じて自由に受け止めればよいのだと思います。いずれにせよ「神慮は深遠にして、人智の測り及ばざる処」なのです。
そして、最終的に連合国側が勝利したことにより、それらの国の人々が受けた最大の恩恵は、彼らの信じた「正義」を疑わずにすんだということかもしれません。
それに引き替え、我々敗戦国側の日本人が味わった最大の苦痛は、自分たちの信じた「正義」が、「絶対悪」に加担したこともあって、180度覆されてしまったことです。せめて「五分の理」、いや「三分の理」でも認めさせたいものと、多くの人々が未だにあきらめきれずに苦心しているわけです。
その大戦による日本軍の功績として最もよく挙げられることの一つに、白人中心の世界を突き崩す端緒を開いたというのがありますが、それでも戦後しばらくは続いた白人優位の世界にあって、最も輝いていた女性の一人が、この映画の主役を演じたグリア・ガースンという才媛の女優さんでした。…なんてことを書く私は、既にバレてしまっているとは思いますが、かなりの老齢であります。
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