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ミラクル・ワールド/ブッシュマン

一人旅

4.0

ニカウさんのコイサン語講座

ジャミー・ユイス監督作。 空から落ちてきたコカ・コーラの空き瓶を神様に返すため、地の果てを目指し旅するサン族の男・キコの姿を描いたコメディ。 やたら有名な『ブッシュマン』シリーズの記念すべき第1弾で、主演のニカウさんの素朴な演技が印象的な作品。最初から最後までフザケ倒したキワモノB級コメディ映画かと思っていたが、意外や意外、きちんとしたストーリーがある。それでいて自由を極めた作風が新鮮で、これは恐らく本作が南アフリカ製作の映画だから。アメリカ・ヨーロッパの定型的な映画のつくり方に囚われることなく、自由にストーリーを組み立て、自由にコメディ演出をぶち込む。ナレーション主導のドキュメンタリーテイストに始まり、同一ギャグの執拗な繰り返し、クイックモーションの異常な多用、ひっきりなしに転換する場面などなど。 アクション・コメディ・ロマンス・アドベンチャー...すべてがてんこ盛り。映画の常識を裏切る、目から鱗の快作だ。 群像劇風のストーリーが特徴で、3つのエピソードが交互に映し出される。 (1)セスナ機のパイロットがポイ捨てしたコカ・コーラの空き瓶を神様に返却するため砂漠を旅するキコの冒険。 (2)現地に住む白人の生物学者と、都会からやってきた新米女教師の出会いと交流。 (3)遠く離れた異国で発生したクーデターの模様と、政府軍VS反乱軍のバトル&カーチェイス。 これら相互に無関係の3つのエピソードがやがて交錯し、ひとつのクライマックスを迎えていくさまは圧巻。 お約束のギャグも満載。故障した(ブレーキの利かない)車を停止させるため、タイヤの後ろに石を挟む→失敗して車だけどこか行っちゃう...を延々繰り返すシーンはチャップリン的ギャグの応酬で笑いが止まらなくなるし、ドジを繰り返す生物学者のポンコツ&純情っぷりも最高で、女教師を前にすると緊張してテーブル倒すわ黒板倒すわでもうハチャメチャ。恋敵のキザな男に手柄横取りされて、女教師からは一向に興味を抱いてもらえないという運のなさが何だか可笑しく、哀しい。 ニカウさんが話す“クリック音”混じりのコイサン語も特徴的で、会話の中に“コッ”、“カッ”と変な音が聞こえてくる。ギャグの一要素としてポップな効果音も入れ込まれているのだが、DVDの特典として収録されているドキュメンタリーの中で話すニカウさんの口元からはしっかり“コッ”、“カッ”の音が。世にも奇妙なコイサン語を体感できる稀有な映画でもある。

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