ここから本文です

めまい (1958)

VERTIGO

監督
アルフレッド・ヒッチコック
  • みたいムービー 192
  • みたログ 1,834

3.78 / 評価:599件

解説

今なお映画界に多大な影響を与えるアルフレッド・ヒッチコック監督の作品群の中でも著名なサスペンスミステリー。過去のトラウマから高所恐怖症になってしまった元刑事が、ある人妻の身辺調査を続けるうちに彼女の奇異な行動に翻弄(ほんろう)されていくさまを描き出す。高所恐怖症や夢遊病といった心理学的な仕掛けをちりばめ、過去と現在を交差させた技巧を凝らした演出や、二つの役柄を演じ分けたヒロイン、キム・ノヴァクのなまめかしい美貌に魅了される。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

かつて同僚を転落死させてしまったトラウマから極度の高所恐怖症を患う元刑事ジョン(ジェームズ・スチュワート)の前に、ある日旧友が現れる。昼間から夢遊病者のように不可解な行動を取る旧友の妻マドレイヌ(キム・ノヴァク)の調査を依頼され、ジョンは早速彼女の尾行を始める。そんなある日、彼の目前でマドレイヌは海に身を投げてしまい……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)1958 Alfred J. Hitchcock Productions, Inc & Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved.Restored Version (C)1996 Leland H. Faust, Patricia Hitchcock O'Connell & Kathleen O'Connell Fiala, Trustees under the Alfred J. Hitchcock Trust. All Rights Reserved.
(C)1958 Alfred J. Hitchcock Productions, Inc & Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved.Restored Version (C)1996 Leland H. Faust, Patricia Hitchcock O'Connell & Kathleen O'Connell Fiala, Trustees under the Alfred J. Hitchcock Trust. All Rights Reserved.

「めまい(1958)」現実と妄想の境界線を自在に描く高度な映画技法に“めまい”を起こす

※ここは「新作映画評論」のページですが、新型コロナウイルスの影響で新作映画の公開が激減してしまったため、「映画.com ALLTIME BEST」に選ばれた作品の映画評論を掲載しております。

************

 世界の映画史において“サスペンス映画の神様”もしくは“帝王”とも称されるアルフレッド・ヒッチコック監督のミステリーサスペンス「めまい」(1958)は、物語が映像で語られる映画表現の面白さを堪能できる作品の一本だろう。

 イギリス出身のヒッチコックは多くの映画監督に影響を与えたが、特に1950年代末にはじまったフランスの映画運動“ヌーベルバーグ”の中心的監督であるフランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダールらから支持を得て再評価された。その高度な映画技法を駆使した作風、しかも技術本位ではない心理描写に重きをおいた演出は際立っており、スティーブン・スピルバーグ監督やマーティン・スコセッシ監督らもその演出テクニックに影響を受けている。

 ハリウッドでの1作目「レベッカ」(1940)から「裏窓」(1954)、「北北西に進路を取れ」(1959)、「サイコ」(1960)、「鳥」(1963)などとともに評価の高い「めまい」(128分)の原作は、フランスのミステリー作家、ボワロー=ナルスジャック(ピエール・ボワロー、トマ・ナルスジャック)の「死者の中から」で、ヒッチコックに映画化してもらうために書かれたとも言われている。

 「めまい」の中でも特に有名なのが、ジェームズ・スチュアート演じる高所恐怖症の主人公ジャックが、螺旋状になった階段の上から階段の下を見下ろした時に急激に起こすめまいを表現したシーンだろう。キャメラがトラックバックしながら急激なズームすることで、めまいを起こしたような効果を生み、観客も一緒になって同じような感覚に襲われる。

 さらにこの映画の特筆すべきところは、主人公の視点とともにその情緒不安定な心理と一緒になって物語の中に入り込んだような感覚におちいる作りとなっているところ。それは映画のタイトルデザインの第一人者であるソール・バスの手がけたオープニングからはじまり、カメラの動きやクローズアップ、レンズのフィルター効果、衣装や小道具にいたる色づかいや照明、役者の表情(視線)や髪型、しぐさまで、そして感情を表現したバーナード・ハーマンによる音楽(効果音)が一つになって、説明的な台詞ではなく、視覚的に物語や主人公の心理が描写されていく。

 主人公の心理は、次第にこの世では不可能な性的イメージを求めるものとなり、妄想の中の美女あるいは死者を蘇らせようとするようなある種の偏執狂的な性的フェティシズムへと変化する。まるで主人公とともに観客も不安定なめまいを起こし続けているようだ。ヒロインを演じわけたキム・ノヴァクの肉感的な魅力やけだるい妖艶さもそんな心理を増長する。

 ヒッチコックの映画は常に独特な「視点」=「カット」で描かれる。我々が見ている世界は果たして現実なのか、妄想なのか、夢なのか。現在のようなデジタル技術のない時代に、映像で語るその技法はもはや映画表現の古典となっており、その発想力、想像力には舌を巻く。見る者の心理も試される名作だ。(和田隆)

映画.com(外部リンク)

2020年5月14日 更新

本文はここま>
でです このページの先頭へ