閉じた世界のなかで
- 文字読み さん
- 2008年10月24日 22時40分
- 閲覧数 723
- 役立ち度 4
- 総合評価
1969年。エリック・ロメール監督「六つの教訓物語」第三話。知的な会話と美しい女性たち。まるで村上春樹のよい小説のような世界。そしてその「世界」が閉じられているのもハルキと同じです。「ノルウェーの森」が好きな人は絶対に楽しめます。この映画はカトリックの世界観(神―教会―人)で閉じられている。
数学の確率論やパスカルをめぐって「無限」の問題が論じられているのですが、そんな小難しいことは知らなくても楽しめるのは、わかりやすい構図になっているから。主人公を誘惑する黒髪の人妻、主人公が一目ぼれする金髪の女子学生。具体的で生々しい女性と観念的で頭のなかの女性。そして、黒髪の人妻の旦那(登場しない)をはさんで、4人だけで世界が動いているかのように、映画のラストはきっちりとおさまっている。カトリックに閉じられ、無限に閉じられ、人間関係でも閉じられた世界。
決して主人公の主観ショットにならず(人物はカメラを直視せず斜めに視線を向ける)、傍観者的なカメラもすばらしい。特に黒髪の人妻との会話では、ベッドに入っている女性の周りを主人公が歩き回る。いくつものランプ(光源)が映るのですが、不動の彼女と動的な主人公の対象が見事です。最初の教会のミサで金髪の女子学生が説教壇へ向ける熱いまなざし(つまり神へのまなざし)を横から撮る場面のみが主人公の主観ショットなのですが、それもまた、主人公の思い込みの始まりとして見事としかいいようがないです。
最後に主人公がすべてを了解して終わるっていう結末もハルキ的ですね。これはどうかと思うけれど。物語はともかく、映画としては文句なし。
詳細評価
イメージワード
- 未登録
このレビューは役に立ちましたか?