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コレリ大尉のマンドリン (2001)

CAPTAIN CORELLI'S MANDOLIN

監督
ジョン・マッデン
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3.36 / 評価:180件

原作の魂が失われた映画

『コレリ大尉のマンドリン』は、映画は観たことがなかったが、連れ合いが原作の小説(ルイ・ド・ベルニエール作)を持っていたので読ませてもらった。連れ合いは2001年の封切り時に映画を観て、感動した勢いで原作を買ったらしい。しかしあまりに分量が多くて読む意欲がしぼんでしまい、買ってから10年以上も経つのにまだ半分も読んでいないそうだ。
原作は、綿密な取材をもとに多様な人々の証言や独白で構成された、ギリシャの現代史を俯瞰した大河ドラマという感じ。1941年、枢軸国としてギリシャを共同で占領していたナチスドイツとイタリアが、イタリアの降伏のために仲間割れを起こし、ナチスがケファロニア島に進駐していたイタリア兵を大量に虐殺したという悲劇が、とりわけ大きなエピソードになっている。

原作の時代背景は1941年から90年代半ばまでという長きにわたる。タイトルになっているコレリ大尉は、全体の5分の2を読んだところでようやく登場するが、そこからはページを捲るのももどかしく一気に読み終えてしまう。この原作がどのように映像化されたのか興味がわき、DVDを借りて一緒に観た。映画をきっかけに夫婦間で会話が弾んだのは良かった。
連れ合いにとっては約10年ぶりの再見だったが、よほど気に入ったらしく「いや~、ニコラス・ケイジかっこいいね」と言って、彼とペネロペ・クルスの場面を中心に何度も繰り返し観ていた。先に原作を読んでいた私は、膨大なエピソードからラブロマンスと戦争の要素だけ抜き出して、分かりやすい映画に仕上げたつもりが外したな、と醒めた気持ちで観ていた。

映画で良かったところは、舞台であるケファロニア島の景色が綺麗なこと。純真な少女が走り回り、羊がのんびりと草を食む丘の風景。信心深い人々が催す素朴なお祭りや、人々が集いニュースを論じ合うカフェの風景。こうした美しい島には、沖縄もそうだが戦争の悲劇がつきものである。これで口ずさみたくなる主題曲があったら評価はもっと高くなっていたかも。
ダンスや歌の場面はけっこうあるのだが、映画が終わってみると音楽の印象が薄く、主題曲のメロディを思い出せない。タイトルになっているマンドリンにしても、重傷を負ったコレリ大尉(ケイジ)の肋骨を繋ぐために弦が使われたと語られるくらいで、ほとんど演奏する場面がない。実にもったいないことだと思う。

映画化にあたり原作を脚色するのは仕方ないが、コレリ大尉とペラギア(クルス)のロマンスを引き立てるために、重要なエピソードや登場人物の性格が改変されてしまい、映画全体の旨みが失われてしまったようだ。戦争に楽器、で思い出すのは本作の他に「ビルマの竪琴」や「戦場のピアニスト」があるが、そうした先輩映画の足元にも及ばない。
原作では戦争で引き裂かれた二人の再会は、老人となる90年代半ばまで待たねばならないが、映画では1953年のケファロニア島の大地震の直後にあっさり再会してしまう。また、ペラギアの父親であるイアンニス医師(ジョン・ハート)は地震で亡くなってしまうが、映画では最後まで生存している。このあたりは映画化におけるやむを得ない改変と納得できる。

ペラギアと恋仲になるコレリ大尉が、ナチスによる虐殺から生き永らえたのは、カルロという部下が凶弾の盾になってくれたから。原作ではカルロはコレリを愛する同性愛者であるのだが、映画ではそういった事情は切り捨てられ、単にカルロがペラギアに同情したからとしか描かれない。同性愛という要素は男女のラブロマンスには邪魔ということか?
もっとも大きな改変は、ペラギアの婚約者であるマンドラス(クリスチャン・ベール)の性格だ。原作のマンドラスは純朴な漁師だったが、戦争で心身ともに荒廃し、冷酷非情な共産主義のゲリラに変貌してしまう。再会したペラギアを暴行しようとするが果たせず、最後は絶望して入水自殺。いわば第二次大戦から内戦へと突き進むギリシャの混乱を体現したような最後を遂げるのだ。

映画のマンドラスは占領軍に対しての憎しみは見せるものの、最初から最後までいい人のままで終わる。重傷を負ったコレリを助け出すのもマンドラスだし(原作でコレリを救うのは、ヴェリサリオスという巨漢だ)、ペラギアの心変わりを知って男らしく身を引き、彼の生死は明確にされない。クリスチャン・ベールを悪役にはできないという事か?
逆にマンドラスの母親ドロスーラがナチスに射殺される(原作では大地震の後まで生きている)。ギリシャの大女優イレーネ・パパスに対して、ずいぶん失礼な扱いである。映画ではギリシャ内戦などなかったかのように、大地震の後に平和な島の日常が戻ってきたように描かれている。いくらなんでも観客をバカにしていないか?映画と小説は別物といっても、これじゃ評価は★3つがいいところだろう。

詳細評価

物語
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