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ギャング・オブ・ニューヨーク (2001)

GANGS OF NEW YORK

監督
マーティン・スコセッシ
  • みたいムービー 253
  • みたログ 4,083

3.15 / 評価:746件

乱暴者が死ぬ時に見せた惨めな裸の心が

  • エンタメ至上主義 さん
  • 2007年10月22日 23時52分
  • 閲覧数 1930
  • 役立ち度 104
    • 総合評価
    • ★★★★★

「デカプリオとキャメロンディアスの愛の物語」
という宣伝があまりに的外れ。
2人のロマンスなんてどうでもいい。

紛れもなく主人公はブッチャーであり、
主演はダニエル・デイ=ルイスである。

愛の物語というならば、
ブッチャーがアムステルダムに向けた
哀しい擬似親子愛の物語だ。


【これがアメリカの基本だよな】

20世紀に入ってからのギャングを扱った映画は
『ゴッドファーザー』を筆頭に数多く存在するが、
19世紀のニューヨークを舞台にした
ギャング映画は珍しい。

「へえー、ニューヨークにもこんな時代があったんだ」
と思わせるインパクトがある。

そして本作で描かれているのは、
アメリカという国の根本的なベースでもある。
「そうだよなあ、アメリカってこうだよなあ」
としみじみ納得させられる。

黒人にせよ、南米人にせよ、アイルランド人にせよ、
常にトラブルの元になる移民をなぜ受け入れてきたか?
それがアメリカについての素朴な疑問だろう。
自由の精神だといってしまえば美しいのだが、
どうも嘘臭い。

「軍隊への徴兵」と「選挙の投票稼ぎ」。
移民には、この2つの利用価値
があるということなら、しっくり来る。

破廉恥なまでに実利的な発想じゃないか。

こういった時代の流れが、
武士道にも似たアメリカンネイティブの
誇りを持つブッチャーにとっては、
「利益のために誇りを捨てる恥知らずな潮流」
として我慢がならないのだった。

「そんな目先の利益に釣られて、
 純粋なアメリカを壊すな」
というのが彼の怒りだ。
明治維新の「尊王攘夷」と似てるんだよな、これが。

ブッチャーがただの暴れ者のギャングではなく、
なんとなく、もの哀しく感じられるのは、
時代に追われて滅び行く者の哀しみがあるからだろう。


【ブッチャーの哀しい愛情】

もっと哀しいのは、
リーダーとしての孤独と
アムステルダムへの一方通行の愛情だ。

ブッチャーは、
アムステルダムが神父ヴァロンの息子であることに
最初から気づいていた。
敵ながらに敬意の念をいだく神父の息子に対して、
できれば自分が親代わりになりたいという気持ちがあった。

それでも親の敵である自分を本当に許してくれるのだろうか
という不安がある。
そんなときに、アムステルダムが自分の命を救ってくれた。
飛び上がるほどに嬉しかったのだろう。
アムステルダムも、
父のように暖かく包んでくれるブッチャーに
親しみの情を持ち始めていた。

その喜びがアムステルダムの寝室でのシンミリ話の
シーンで思い切り表れる。
ベットには、かつてブッチャーの女だったジェニーが
アムステルダムの隣に寝ていた。
本来ならば修羅場の展開だ。

ところがブッチャーは一向に気にしてない。
彼にとっては、昔の女なんかどうでもいいのだ。
息子のような存在ができた嬉しさで胸が一杯なのだ。

ブッチャーはいかに神父ヴァロンに敬意を抱いている
かをトツトツと話した後、
「俺には今まで息子はいなかった」と言う。
それは、
「もう俺はおまえを息子だと思っているよ」
という意味だった。

そんなだから、
アムステルダムの幼馴染が
「あなたは騙されている。
 アムステルダムはあなたを殺そうとしている」
と密告したとき、必要以上に怒りを爆発させてしまう。

「なんでそんなこと言うんだ!」
ブッチャーは、
アムステルダムが神父バロンの息子であることに気づいてる。
だからこそアムステルダムが自分の命を
助けてくれたのが嬉しかった。
その密告は彼が最も聞きたくない内容だったのだ。

そして、圧巻の記念祭の場面。
ブッチャーがナイフ投げの芸を披露するときに、
ジェニーを舞台に呼んでわざと危ない投げ方をする。
なんとスリリングな。

かつて愛した女への愛情よりも、
擬似の息子への執着の方が強いのだ。
昔の女を挑発のための道具として使うほどに。


**以下、ネタバレ**




【死ぬ時に見せた惨めな裸の心】

アムステルダムが申し込んだ決闘を
さらりと受けたブッチャー。
本当はもはや戦いたくなかった。
でも、ギャングの長として、
そんなセンチメンタルな素振りを見せるわけにいかなかった。

いよいよ最後の一騎打ち。
アムステルダムは渾身の力を込めて
ブッチャーの腹を刺す。
ナイフ使いの達人であるはずの
ブッチャーの腕はまったく動かなかった。

絶命したブッチャーの手は、
引き離そうとしても離れないくらい、
アムステルダムの手を握り続けていた。
ぶざまにすがりつくように。

恥を知る男として、
ギャングの長として、
絶対に見せることができなかった、
惨めな裸の心を
孤独な男の寂しさを
死ぬ間際になって初めて見せた
ブッチャーの気持ちが
哀しくて仕方がない。

詳細評価

物語
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