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ギャング・オブ・ニューヨーク

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4.0

裏版『風と共に去りぬ』

この映画の後に『風と共に去りぬ』を見たのだけれど、偶然にもコインの裏表のような関係だった。あちらは南部のジョージア州からみた南北戦争だけれど、こちらはニューヨークを舞台にその戦争の裏側を描いてる。『風と共に去りぬ』ではイケイケどんどんの北部の”Yankee”たちが攻め入ってくるけれど、北部にもこんな暗い歴史があるとは知らなかった。一方でアイリッシュ移民の玄関口となっている波止場から北軍を直リクルートしていたり、なるほど北軍が人員で南部を圧倒したわけだと納得した。北部はたくましい。金と打算の世界だ。 『風と共に去りぬ』が戦争を背景にスカーレットの流転する運命を描いていたのに対して、『ギャング・オブ・ニューヨーク』はネイティブ(移民先発組)たちと新しい移民たちの対立や、アムステルダムの復讐と恋の行方、そして南北戦争とニューヨーク徴兵暴動と、扱うモチーフが非常に多彩だ。『風と共に去りぬ』でさえ完結に4時間を必要としたのに、これを精々二時間半強で収め切れられるわけがない。 167分は現代ではかなり長大な方の映画だけれど、それでも急ぎ足で纏め終えた感は否めない。とても複雑なドラマなのだから、もっと上映時間を長くして丹念に見たかったというのが本音だ。それだけの強度がある作品だ。 それはともかく、当時のアメリカの政治や社会事情を知れたのはよかった。先発移民組(WASPというらしい)と後発でやってきたアイルランド系移民の間にいがみ合いがあるのは知らなかったし(自らも移民なのにネイティブと自称するのも変な話だ)、奴隷制に反発する北部でも徴兵制に対する暴動があったりと、北部も一枚岩ではないとわかった。ローマ郊外の「チネチッタ」に建造されたというファイブ・ポインツのセットは特大級で迫力があったが、当時のニューヨークってあんなにも汚なかったのだろうか。町並みもセット感は否めないし、どこかファンタジーな空気感が漂う。その嘘くさい感じが歴史モノとしての評価を妨げてる気がした。ドラマより徹底した歴史考証を見たかったというのは多くを望み過ぎか。クライマックスを含め、歴史的事実を都合よくアムステルダムのドラマに切り貼りしている・・という印象を覚えてしまった。でもラストシーンはちょっと感動的。二つの巨塔が物悲しそうにニューヨークを見下ろしていた。

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