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キプールの記憶

neo********

4.0

静かにあぶりだされる戦争という愚かさ

イスラエルとアラブの戦争を背景にしているからといって、どちらかの側に立つという姿勢を一切とることなく、戦争をイデオロギーや時代、政治思想や利害対立というような側面で触れることもない誠実な手法で描く。 ただただある救助部隊の戦場での活動をのみカメラは追う。さながらドキュメンタリーと見間違うほどの、淡々とした演出と必要最低限のセリフ。戦場において傷ついた兵隊をヘリで救出する行為をひたすら追う   我々は救助隊員たちと戦場に赴き負傷兵を運び出すという戦争の日常を味わう。ヘリの騒音、泥と血と汗にまみれた負傷者、担架をかついで必死に戦場を走る隊員たちの息づかい。救おうとしても無常に散っていく命。  救助隊員たちの徒労感や虚しさ、疲労さえ伝わる。それはあまりにもリアルに我々に迫る。 救助隊員を主人公に据えたことで、数々の戦争を描いた映画のなかでも際立った視点をもち異彩を放つ。この作品には激しい戦闘シーンや凄惨な場面は全くない。だが戦争という愚かな行為を見事に我々に見せ付けてくれる、救助隊員たちの目を通して。破壊し、傷付けることは簡単だが、人間を救い助けることは難しい戦争というナンセンスな愚かさを。

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