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千年の恋 ひかる源氏物語

千年の恋 ひかる源氏物語

GENJI - A THOUSAND YEAR LOVE

143

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2.0

東映創立50周年記念?!

 映像は良かった。天海祐希氏の光源氏も賛否あると思うが、私はビュジュアルとして映えていると思っている。(余談1)  ただ、理解に苦しむ点が幾つかある。最初に気になったのは台詞である。言葉がモロに現代の崩れた日本語である。まず、これで作品全体が軽くなってしまった。本当に東映の栄えある50周年のための映画なのだろうか? 華やかな平安貴族の描写は美しく重厚なのに、俗な現代語がくるとは?   これでは京都のシックな老舗料亭で上品な和服美人の女将自ら運んできた高級漆器の膳の中身を見たら、まな板皿にはケンタッキー・フライドチキン、御飯モノはマクドのハンバーガー(余談2)、御椀にはサッポロ一番塩ラーメン。上品な瓶子(余談3)から注がれた酒は、どう味わっても缶チューハイ。これでは詐欺だ。銭返せと怒鳴りたくなる。(余談4)  特に呆れ果てたのは、ラスト近くの場面で下男が老年の光源氏に向かって「ひかる源氏さん」と馴れ馴れしく現代語のタメ口で呼ぶのである。相手は帝に次ぐ大権力者・雲上人・天下人、制作者は本気で千年前の雅の世界を描く気があるのだろうか?  2つ目は吉永小百合氏扮する紫式部の物語が冒頭で些か延々と続く。森光子氏扮する白塗りホラーのような清少納言への対抗心は微笑ましくて捨てがたい場面なのだが、「ひかる源氏物語」という2時間半弱の映画の冒頭とするには、些か勿体ぶり過ぎている。   「ゴッドファーザー?」のように、父の青年時代の物語とドンとなった息子の物語を交錯させる構成に比べて、何ともお粗末だ。「ゴッドファーザー?」と比べるのが酷との意見もありそうだが、この作品は天下の東映が50周年を記念した社の総力をかけて制作したはずの映画なのである。しかも題材は全世界で翻訳出版されている日本の古典中の古典文学作品である。  3つ目は、無茶な恋愛描写があまりに多すぎる点。光源氏は大勢の女性と関係をもったプレイボーイで有名だが、光源氏役を女優にしたときから男女の営み場面は無理がある。だから、私は台詞や詩歌などで恋のやり取りをする表現に力点を入れると思っていたし、それが宝塚歌劇団で男役をやってきた天海氏の存在意義だと思うのだが、制作者は裸の場面を登場させた。相手は裸なのに光源氏は暑苦しい直衣や束帯を着たままだ。光源氏は女優が演じているのだからせいぜい不自然に着物を崩すだけで全て脱ぐわけにはいくまい。しかも相手の女優の芸能界における地位が高いほど露出度が低い。  解釈の仕方によれば源氏物語は身勝手なマザコンの性遍歴の物語であり、関係をもった女性は老女から幼女まで、それは否定しない。だが、一連の恋愛描写はどう考えても無理であり爆笑モノの滑稽さだ。  私はむしろ大和和紀氏が源氏物語を漫画化した「あさきゆめみし」を原作に映画を創り、奇を衒わず美少年男優を光源氏にするべきだったと思う。また、メル=ギブソン監督風に10世紀の日本人が話していた京言葉を全編台詞で採用すれば、面白いかもしれない。あくまで私の趣味だが。  最後に、なぜ吉永小百合氏はこんな映画に出演したのだろうか? (余談1)2007年度大河ドラマ「風林火山」で上杉謙信役をGackt氏が扮しているが、私は思い切って女優が演じてもらいたかった。謙信は女性だったという説得力ある説もあるほどだから。 (余談2)マクドナルドを関東では英語風の略し方で「マック」と呼ぶが、関西では日本語の作法通り「マクド」と称す。言語学的に関西の呼び方が日本語の文法に叶っている。 (余談3)酒を入れる徳利のようなもの。大和和紀氏「あさきゆめみし」や岡野玲子氏「陰陽帥」に小道具として頻繁に出る。 (余談4)映画館で観なくて良かった。

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