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マルホランド・ドライブ (2001)

MULHOLLAND DR./MULHOLLAND DRIVE

監督
デヴィッド・リンチ
  • みたいムービー 580
  • みたログ 2,689

3.79 / 評価:805件

解説

ある真夜中、マルホランド・ドライブで車の衝突事故が発生。ただ独り助かった黒髪の女は、ハリウッドの街までなんとか辿り着き、留守宅へ忍び込む。すると、そこは有名女優ルースの家だった。そして、直後にやってきたルースの姪ベティに見つかってしまう。ベティは、とっさにリタと名乗ったこの女を叔母の友人と思い込むが、すぐに見知らぬ他人であることを知った。何も思い出せないと打ち明けるリタ。手掛かりは大金と謎の青い鍵が入った彼女のバッグ。ベティは同情と好奇心から、リタの記憶を取り戻す手助けを買って出るのだが…。

allcinema ONLINE (外部リンク)

映画レポート

「マルホランド・ドライブ」─リンチ復活。「ツイン・ピークス」にハマった人は必見

ご存知の方も多いと思うが、「マルホランド・ドライブ」はもともとABCネットワークのTVシリーズ用の企画であった。しかし、リンチの撮ったパイロット版は局のプロデューサーに却下され、「ツイン・ピークス」ふたたび、の期待は潰れたかに見えた。

しかも、次にリンチが世に出したのは「ストレイト・ストーリー」だった。リンチウィルスに免疫のない人々はみな涙腺を緩めたが、これは熱狂的なリンチファンには手放しで喜べるような映画では到底なかった。リンチの撮る人情話など、それがどんな美談であろうがマーケットに需要なんかない。

だが、リンチは1年足らずで本来の場所に戻ってきた。アメリカのTV局に捨てられたパイロット版は、ヨーロッパの見識ある出資者のおかげで、劇場映画として見事に再生したのである。“所詮、TV番組の焼き直しに過ぎないのでは”という不安は、まったくもって杞憂に過ぎない。当初、結末など考えもせず、物語を拡散気味に語っただけのパイロット版を、リンチはものの見事に映画の文法でハードランディングさせることに成功しているのだ。

謎解きと深読みに費やす至福の2時間半。そう、あの中毒症状にまた蝕まれる。何度でも観るべし。(eiga.com編集部)

2月16日より、シネマスクエアとうきゅうほかにてロードショー

[eiga.com/2月15日]

映画.com(外部リンク)

2002年2月15日 更新

「マルホランド・ドライブ」デビッド・リンチによる辻褄合わせが、想像を絶するレベルで成功した奇跡のような一本

 本作は、もともとデビッド・リンチが米4大ネットワークのABC向けに、テレビシリーズのパイロット版として作ったものです。リンチとABCは、過去に「ツイン・ピークス」で大成功を収めていますが、今回のパイロットはボツになりました。しかし、後にフランスの会社がその権利を買い取り、長編映画としてリンチに発注し直し、出来上がったのが「マルホランド・ドライブ」なのです。

 ここから先は、「マルホランド・ドライブ」に関する1つの解釈ですが、かなり正解に近いと思います。思いっ切りネタバレしてますので、本作を未見の方や「謎解きは自力で行いたい」という方は、お読みにならないことをお勧めします。

 単刀直入に行きますよ。「映画の冒頭からクラブ・シレンシオを経て、青い箱を開くところまではナオミ・ワッツ演じるダイアン・セルウィンの夢。そこから後が現実の物語で、ダイアンの回想シーンが少々混じる」というのがザックリの解釈。青い箱のシーンの直後、カウボーイがベッドで眠るダイアンに「起きる時間だ」と告げるので、そこまでは夢ということで間違いないでしょう。

 ダイアンの夢では、彼女(夢の中ではベティ)が「ハリウッド女優として成功の足がかりをつかむ」「リタという美しい女性と愛し合う」という内容が描かれます。そしてその夢には、うまくいってない現実の裏事情(あるいは言い訳)が散りばめられています。

 現実の世界では、アダム・ケシャー監督作の主演女優を射止めたカミーラ・ローズ(ローラ・エレナ・ハリング)は、監督と恋仲になっています。しかしダイアンの夢の中では、カミーラはリタと名乗り、ダイアンと恋に落ちます。そしてケシャー監督は、主演女優を自分で選ぶ権利がない。映画の出資者と覚しき「エスプレッソの男」が写真を突きつけ「この女優を使え」とねじ込んできます。写真にはブロンドの女優が映っていて、「カミーラ・ローズ」と書かれています。現実のカミーラとは別人ですが、「カミーラ・ローズという女優は、実力で選ばれたわけではないのよ」という、ダイアンの黒い願望が読み取れます。

 ダイアンの夢は、特にケシャー監督にひどい嫌がらせをします。主演女優をごり押しされたケシャーが立腹しながら自宅に帰ると、妻がマッチョな男と浮気の真っ最中。ケシャーは間男に殴られ、自宅を後に。ひとりホテルにチェックインしますが、クレジットカードが無効になっており、事務所のアシスタントに「あなたは破産したようだ」と告げられます。

 アシスタントの指示で、夜更けに「カウボーイ」という男に会いに行くと、その男から「態度が尊大だ」とか難癖をつけられたあげく、「主演女優を選ぶことができない件」を念押しされる。「監督が一番エラいってワケじゃないのよ」というダイアンの意地悪でしょうか。

 終盤、ケシャー監督のプール付きの邸宅で行われるパーティーのシーンがあります。現実のシーンです。ここにカミーラ・ローズ役の女優、エスプレッソの男、カウボーイといった主要なメンツが登場しています。これらのメンツを使って、ダイアンは夢を構築している。そしてここに至ってようやく、ベティがダイアン・セルウィンであり、リタがカミーラ・ローズであり、前者は売れない女優、後者は成功した女優であることが判明するのです。

 その後のストーリーは見ての通り。この映画は、悲しい結末で終わるラブストーリーです。

 もともと、テレビシリーズとして撮影された部分がどれで、後から追加撮影した部分がどこなのか、正確には分かりませんが、いずれにせよ、デビッド・リンチによる渾身の辻褄合わせが、想像を絶するレベルで成功し、傑作となって蘇ったという奇跡の一本だと言えましょう。18年ぶりにじっくり鑑賞して、改めて感服しました。そして理解できました。

 以上「マルホランド・ドライブ」が面白いと思った方は、「ツイン・ピークス The Return」にも是非チャレンジしてみてください。そっちの謎は、全然解けないんですけどね。(駒井尚文)

映画.com(外部リンク)

2020年8月20日 更新

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