解説
東西冷戦時代の東ドイツに生まれた男の子ハンセル。母と二人暮らしの彼の夢は、自由の国アメリカでロックスターになること。ある日、米兵から結婚を申し込まれた彼は、性転換手術を決意する。しかし、手術のミスで股間には“怒りの1インチ(アングリー・インチ)”が残ってしまう。名前をヘドウィグと変え、何とか渡米するも米兵には結局捨てられてしまう。それでも夢を思い出しロックバンドを結成したヘドウィグは、ある日、17歳の少年トミーと出会う。同じ夢を持つトミーに愛情のすべてとロックシンガーとしての魂を注ぎ込むヘドウィグだったが……。
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映画レポート

「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」─“化粧顔”が見事なヒロイン=ヘドウィグにゾッコン!
オフ・ブロードウェイで2年半ロングランしたグラムロック・ミュージカルの映画化。監督・脚本・主演のジョン・キャメロン・ミッチェルはその初演キャストで、マドンナもD・ボウイも、彼の声に聞き惚れたそうな。
なるほど、ヒロイン=ヘドウィグにゾッコンになってしまうステキな映画だ。全編にあふれるすべての歌が素晴らしく、D・ボウイやルー・リードのファンにたまらないどこか懐かしいメロディは、思わず口ずさんでしまうほどだ。熱く熱くシャウトされる意味深な歌詞(プラトンの「饗宴」の中の一節「愛の起源」からとられ、愛って自分の“カタワレ”を探すことなのと歌われる)がいい。彼女がドサ回りして歌うのは場末の店ばかり。愛と希望でいっぱいの、広大なテーマ性を持つ歌詞とのあまりのギャップに、より惨めに映るのだ。ああ、痛。
グラムロック時代のスターのようにキンキラの衣装を着、ウィッグをつけて歌う彼女は、見るからにドラッグクイーンだ。涙に暮れれば、つけまつげは取れ、溶けたマスカラで目元は黒くなる。眉毛の描き方ひとつで、感情の変化を微妙に表現させる“化粧顔”が見事の一語。
ウィッグをとり、ケバい化粧をとるとき、“彼”は真実の愛を見つけるのだろう。そのラストに心震えた!(佐藤睦雄)
2月23日より、シネマライズほかにてロードショー
[eiga.com/3月2日]
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2002年3月2日 更新