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息子の部屋

息子の部屋

LA STANZA DEL FIGLIO/THE SON'S ROOM

99

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5.0

精神分析と国境線

2001年。ナンニ・モレッティ監督。精神分析医の父と会社経営の母の明るい家族だが、高校生の内気な息子は最近様子がおかしい。持ち上がった盗難疑惑の真相を知ろうとする両親だが、ある日事故で息子が死んでしまい、喪失感から立ち直れずに、、、という話。 息子の恋人だったという女性からの手紙をきっかけに、両親の喪失からの立ち直りの違いが明確になっていきます。後戻りしてやり直したいと後悔ばかりが先に立つ父。少しでも息子に関するものを収集したい母。父は、死んでいなかったかもしれない息子を想像し、母は、息子の復元を模索する。可能世界と復元。 そもそも息子の盗難事件で真相にこだわっていた父親は、精神分析医として、原因―結果の連関に物事を収めて納得しようとしているのですが、盗難を否定していた息子が、母親にだけ盗難の事実を告白していたように、父=分析医の「納得」は物事に自分勝手な制限を加えて抑制したものにすぎないことが暴露されています。そうしてみると、息子の死をようやく受け入れたようにみえるラストシーンが、イタリアからフランスへの国境の直前であることの意味も、父親の勝手な制限=国境であるように思えてきます。振り返れば、「イタリアの歌しか聴かないことを息子にばかにされる」というセリフがあったことも思い出されます。 どうやら、息子の死を受け入れていく癒し映画だという評判とは別に、精神分析と国境線とがいかに恣意的な制限にすぎないのかが暴かれる映画だったようです。

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