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アトランティスのこころ

アトランティスのこころ

HEARTS IN ATLANTIS

101

hsa********

5.0

過ぎ去った歳月

スティーブンキング原作の映画は大変な数になっていて、もはやギネス級だろう。 天才的なストーリーテラーでもあるキングだがオーヘンリーに通じるような物語の形式的構造的な美しさを探究する姿勢はアメリカの重要な文化的な態度であると言ってよい。 日本の文学は土着的なバイアスが掛かりすぎて物語の美しさが見えにくくなりがちだ。 キングファンには原作を超えた映画はない、というのが定説のようだが、小説、とりわけ物語と映画は映画の発明以来、作り手を悩ませる最大の要因であり続けている。 この映画は映画に必要なものを最大洩らさず備えているという意味でとても良くできている良作だ。 物語のエッセンスを上手く抽出して、画面との調和がとてもよい。 とりわけ、自宅のポーチや夜の遊園地などなど。 時間の経過を上手く感じさせるのもとても良い。 誰もがこんな素敵な大人に会える訳でもないのだが、これほど素敵でないにしても傍に居たいと思える大人に成れているのかを観客に問うている。 母の苦悩、そしてキング作品のキモの一つといえる超能力者の苦悩を肌で感じ、成長に繋げる主人公。 自分の未来を自分で考え始める、という人生でもっとも大切な肯定のサイクルに目覚める。 人間の不幸はほぼこの肯定感を得られない事から起こると思っているのだが、単に子供時代は良かったなどの郷愁はあまり意味がない。 キャスティングはほぼ完璧で、監督の才能を感じさせるのだが、シャイン、ヒマラヤ杉、などの強い印象を思い出す。 主人公の少年は映画の中とは違って短い人生を終えてしまったが、スタンドバイミーの少年の一人もそうだった。 運命とはかくも残酷だ。 私は冒頭でデヴィッドモースを見るだけで感動してしまったのだが、こうした感動を共有できる人は日本には一人もいないかなと、ちと寂しい思いをしたことを一応書き残しておこう。

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