レビュー一覧に戻る
山羊座のもとに

山羊座のもとに

UNDER CAPRICORN

117

bakeneko

5.0

ネタバレIt‘s Only a Movie, Ingrid!

(英国人によるオーストラリアジョーク) オーストラリアへの移住を希望する英国人がオーストラリア外務省でお決まりの質疑応答に応じていた… 国籍は?―イギリスです。 持病は?―ありません。 犯罪歴は?― … … … どうしたのかね?-あの…やはり無いとオーストラリアへの入国はダメなんでしょうか… え~。本作に描かれたように一時期英国の犯罪者を開拓団として移民させたために、未だに冗談めかして英国人からprisonerと呼ばれる、オーストラリアがまだサウス・ウエールズと呼ばれていた1830年代のシドニーを舞台にした葛藤劇で、ヒッチコックの「殺人!」の原作も書いているオーストラリアの女流作家:ヘレン・シンプソンの同名小説が原作となっています。 新総督の従兄弟でアイルランド名門の青年チャールズ(マイケル・ワイルディング)は、新天地での成功を夢見てサウス・ウエールズのシドニーに上陸する。早速この地の不動産業の大物サム・フラスキー(ジョセフ・コットン)と知り合い、晩餐に招待されるが、そこで紹介された妻ヘンリエッタ(イングリッド・バーグマン)は嘗てのチャールズの姉の親友で、使用人のサムと駆け落ちした人だった。自分の部屋に引籠って酒浸りのヘンリエッタに嘗ての元気を取り戻させようとチャールズは奮闘するが、サムの屋敷で実権を握っている家政婦のミリー(マーガレット・レイトン)はサムの嫉妬心を煽り立てて…という葛藤劇で、関係が拗れている夫婦の過去と心境が次第に明らかとなってゆく作劇となっています。 イングリッド・バーグマンが神経症に追い詰められる設定はー「ガス燈」 使用人と令嬢の捻じれた愛―「嵐が丘」 豪華ながら空虚な邸宅に込められた葛藤&怖い家政婦という設定―「レベッカ」 といった葛藤愛憎ミステリーが寄せ集まっている物語で、撮影はジャック・カーディフがトレードマークの“赤”を鮮やかに映し出す深みのある映像美を見せてくれます。 ヒッチコックとしては故郷ロンドンで久々に撮影して、「レベッカ」の様な本格的な文芸ロマンを目指した作品ですが、いつものスリラーを期待した観客には受けが悪く、当時としては破格の250万ドル以上の製作費を投じましたが興行的には大惨敗で、ヒッチコックの独立プロT.A.P社は2作目にして倒産してしまい、日本での公開は見送られてしまいます(後に「ヒッチコックの南回帰線」という題名でTV放映されました)。 また、複雑な役柄を長回しで撮られるイングリッド・バーグマンが役に悩みぬいたことでも有名な作品で、ヒロインの細かい心理状態について質問攻めするバーグマンにヒッチコックが言った―” It‘s Only a Movie, Ingrid”(たかが映画じゃないか イングリッド!)は後世に残ることになりました(そして本映画の撮影の直後、バーグマンはイタリア人監督のロッセリーニと駆け落ちします)。 当時は色々とケチが付いた作品ですが、今見るとヒロインを中心とした登場人物の心の動きを的確に描いた堂々たる文芸大作で、バーグマンの34歳の女盛りの美しさと悩みぬいた演技は必見ですよ! ねたばれ? 1、英題“UNDER CAPRICORN”を直訳しているように見える「山羊座のもとに」ですが、 Under は、オーストラリアを指す英語“Down Under”(英国から見て“地球の裏側”の意味)、そしてCAPRICORNも山羊座ではなく、南回帰線を意味していますから“サウス・ウエールズ(オーストラリア)”の意味です(TV邦題は正しかったのね)。 2、狂言回し的な好青年役のマイケル・ワイルディングーエリザベス・テイラーの2番目の夫でした。

閲覧数422