高い完成度 しかしこれは「異例」
- my******** さん
- 2019年4月3日 23時48分
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物語の完成度とドラマ性、芸術性が高く大好きな作品。と思うと同時に傑作と名高い今作を他のクレしん映画と比べる一種の「基準」となってしまっている点は残念にも感じる。今作は間違いなくクレしんとしての「反則技」を使用した「異例」作品であるから。
まず、現在と過去のギャップが面白い。しんのすけが字が書けるとか横に書くとか、笑い要素ではない少し深い面白さを感じる。マサオくんならぬ、オオマサ様一家の登場は同じく「ギャップ」というテーマを表面的に笑いにした良いアクセントになっていた。ちゃんとDNAを残した本性も面白い。
物語はしんのすけが脇役になり、姫と又兵衛に焦点を当てて描かれるのだが、本当に切なくドラマ性が高い。又兵衛の設定がとにかく魅力的。彼に抱きつく姫や城を飛び出し助けに向かう彼女の姿に胸が熱くなる。
劇中もいろんなストーリーが同時に進む、しんのすけや彼を追いかけるみさえたちはもちろん、又兵衛の背景、姫の心情、野伏せり、戦になるまで、現在とのギャップ。それらを詰め込んで無駄が一切ない。
ラストの車での加戦は爽快。
頭相手にしんのすけが言う「逃げるのか!?お前が始めた事だぞ!」というセリフには「これしんのすけじゃない…」と思いつつも、すかさずそれをごまかすかのように、ひろしのダイエット器具での応戦としんのすけのトドメというオチで笑いで被せてくる。ギリギリセーフで上手い。
しかしその後、人が死ぬという描写は…。
もちろん映画的には心掴まれる要素になったのだが、クレしんシリーズとしてはご法度では?と思ってしまった。切なすぎるこの展開で自分を含め大人に切なさを与えたのは間違いないが。
そしてエンドロールの絵や楽曲に、この作品は間違いなく大人に向けた作品であるという事が現れていた。
今作の無駄のない完成度の高さは「大人にとって」の最高傑作に間違いない。こんな作品を見れてとても嬉しいし、個人的にも大絶賛。しかし視点を変えると、低俗なナンセンスコメディーというシリーズのカラーを抑えてしまった所にこれがクレしんである必要性が少し薄いのも事実。また「死」を直接的に描くという「タブー」とも取れる展開は反則だろと思ってしまう。本編の無駄のなさ深さは逆に、本来のターゲットである幼稚園から小学校低学年の「子供にとって」楽しめる作品であるかはとても微妙だと思う。この作品の完成度を賞賛する事でクレしん本来の要素の否定にも繋がってしまうのでは?という心配も感じた。
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