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D-TOX

D-TOX

D-TOX/EYE SEE YOU

96

mas********

3.0

スタローンファンとして鑑賞しましょう

さて今回のスタローン祭りの締めはこれまた彼には珍しいサイコスリラーもの。地味な作品ではありますが、いつもと違うスタローンの一面も見れて興味深い作品です。 今日のお題目は「D-TOX」です。 「羊たちの沈黙」以降、いわゆるサイコ物が流行りました。中には「セブン」といった超傑作も存在しますが、その大半はブームに乗っただけのこれといった特徴のない作品。本作も正直そのような作品の一本です。 ただ、主役にスタローンを持ってきたことは評価できる。話は恋人まで殺されてしまい、自暴自棄になったFBI捜査官ジェイク・マロイが、故障中の警官たちの復帰施設“D-TOX”で治療を受けるために入所するが、次々と殺人が発生するというスリラー。場所は最低気温が-20度にもなる極寒の地。吹雪のため通信もできず、まさに陸の孤島と化したこの要塞のような施設での正体不明な犯人を巡り、疑心暗鬼になっていく警官たちの物語。 外界から遮断された場所での連続殺人というシチュエーション。これはクリスティの「そして誰もいなくなった」に代表されるサスペンススリラーのお手本みたいなもの。実際、レニー・ハーリン監督の「マインドハンター」などもこの手の映画の一本ですよね。 さてこのような正体不明の殺人鬼が暴れまくる話、まず絶対にやってはいけないのは、主人公が強過ぎてはダメということ。例えばシュワルツネッガーやセガールがやっては、興醒めしちゃいますよね。シュワちゃんにしろセガールおやじにしろ、そんな殺人鬼にやられる訳もない、返り討ちに会うのが関の山っていうわけです。彼らは映画の中ではピンチらしいピンチにも会わず、向かうところ敵なしの完全無欠のヒーローとして存在する。だから彼らの映画は安心して見てられる、その反面、本作のようなサスペンスものは全く似合わないという欠点もある。 しかし同じマッチョヒーローとしてもスタローンやヴァン=ダムは違います。この二人はシュワちゃん、セガールほど図体も飛びぬけてデカイ訳ではないし、何だかんだで結構ピンチを迎える(笑)。同じようなマッチョヒーローとして括られてはいますが、シュワ・セガールはその圧倒的な強さに快感を覚えさせるタイプ、その反対にスタローンたちはピンチや肉体的苦痛に耐え、大逆転を期待させるタイプの俳優たちなのです。 だから結構、この手のドラマには合うのですよね。シュワちゃんだと、シュワに喧嘩売るなんて何てバカな犯人だと思うわけなのですが、スタローンだと必ずしもそうは思えない。本作のマロイのように心に傷を負った男も演じられるスタローン、彼の焦燥しきった表情を見て下さい。目の下にクマがはっきりw。こういったメイクもスタローンだからこなせるわけです。 極寒の舞台、犯人はこの中にいる、お互い疑心暗鬼になるシチュエーション、まるで「遊星からの物体X」そっくりです。共演陣も名優クリス・クリストファーソンにトム・べレンジャーという主役級のスターに、チャールズ・ダットンやショーン・パトリック・フラナリーといった玄人好みのする俳優を使っている。その他にも「007」の最近2作でフィリックス・ライターを演じたジェフリー・ライトも出ている。しかしやはりその中でも目を引くのはSWATを演じた「T2」のロバート・パトリック。シュワとスタローンの2人と共演した俳優なんて彼ぐらいじゃありませんかね。 しかし96分という短めの上映時間で、しかも前半30分近くは発端となる事件を映しているため、メインの“D-TOX”での話は1時間強。だだっ広く、暗く寒々しい施設の中で、あまりに素早く話が進んでしまう。次々と殺されていくのはいいとしても(いいのかよ?笑)、あまりに性急で、一体誰が殺されたのか、登場人物たちの紹介もアッサリとしたものでなかなかついていけない。クリストファーソンやベレンジャーもこれといった見所もなく退場しちゃうし、彼らほどのスターを何と勿体ない扱い方(ある意味贅沢w)。マロイが真犯人に気付くのも何だ、そんなことでわかっちゃうのかって感じですしね。つまり2時間位の上映時間でもいいから、もうちょっと丁寧に人物描写をし、このような作品独特のハラハラ感を出してもらいたかったと残念。とにかく何かよくわからない内に終わってしまったのですよね。 でもセンチなスタローンもなかなかいいものです(尤も最後にはいつものスタローンが見られるわけですが、笑)。 「羊たちの沈黙」や「セブン」の様な、超一級のサイコスリラーとして期待しちゃうと見事に裏切られてしまいますが、スタローンファンとして鑑賞すると存外悪くはないかと思います。 それでは今回のスタローン祭りはここまでです。どうも有難うございました。

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