一人の男が残した人生最後の心の叫び
- gettoughbetough さん
- 2009年1月11日 19時51分
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エイズに罹ったバイセクシュアルの主人公が、自分の欲求を満たすためだけに、女とも男とも刹那的に関係を結んでいく、とにかく身勝手で退廃的なストーリー・・として捉えられがちですが、監督・主演のシリル・コラールが、実際にこの作品の完成直後にエイズで逝去していることを考えると、コラールの愛を求める心の叫びが聞こえてくるようで、切なく、やるせなく、劇場公開から10年以上経った今でも、強烈な印象を残している作品です。
ラストでヨーロッパ最西端の岬に立ったコラールが、日没、そして大西洋に再び上る日を、ただただ淡々と見つめるその瞳の奥の感情は、決して演技では出せないもの。一人の人間が、人生の最後に吐出した全ての感情が凝縮したこの作品に対して、佳作、駄作の烙印を簡単に押すことは、ナンセンスでしょう。
相手役を務めた女優ロマーヌ・ボーランジェ。来日時に、日本のメディアからの「実際のエイズ患者とラブシーンを演じることに抵抗はなかったか?」との、トホホな質問に対し、「日本って、エイズに対する知識、理解が本当に遅れてるのね!」と呆れかえりながら答えたというエピソードには、当時、まだティーンエイジャーであったこのフランス人女優にして、ヨーロッパ女性の精神の神髄を見たような気がしたものです。
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