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柔らかい殻

柔らかい殻

THE REFLECTING SKIN

95

neu********

4.0

アンドリュー・ワイエスは美しく、怖い!

1950年代のアメリカ・アイダホ州、どこまでも広がる農村風景、そこに根付いた文化的保守主義社会を背景に、一人の少年の妄想と狂気が次第に大人達も飲み込み、コミュニティ全体に伝播してゆく、印象的メタファーと鮮烈なイメージに彩られたアメリカン・ゴシック・ホラー、 監督・原作はイギリス人アーティスト、フィリップ・リドリー、異邦人としての俯瞰した視点から静謐に、時に残酷に描写した美しい映像は、後に「ターナー、光に愛を求めて」を手掛ける事となるディック・ポープが撮影を担当し、光と闇を巧みに画き分けるその手腕でアンドリュー・ワイエスの絵画の様な美しい映像を作り上げている、 フィリップ・リドリーは映画を監督するより前から小説家・戯曲家・画家として活動しており、この映画の原作でもある小説「柔らかい殻」の他に「恍惚のフラミンゴ」など、文学者としても素晴らしい作品を残している、構造的には、他者との異差から生じる抑圧、その幻影から逃れ様とする登場人物の強迫観念的な主題を、子供・ゲイ・マイノリティ、の視点から画く事が多く、この映画もワイエスの世界をそのまま映した様なアメリカ原風景の、遥か彼方まで見渡せる開放的な地理的状況とは正反対の文化的保守主義思想に囚われた思想的密室環境を舞台に、少年の無垢であるが故の残酷さと、地域に囚われ続ける人々との関係をリアリズム的描写で画きながらも、全体を覆う白日夢の様な幻想的な美意識に彩られた美しくも残酷な物語である、 またリドリーは画家としては、トランスアバンギャルディア風のどこかエンツォ・クッキを思わせる不思議なタッチのペインティングを制作している、当時この映画「柔らかい殻」はデヴィッド・リンチの影響を指摘されたが、画家としても彼から大きな影響を受けている様だ、こちらもなかなか味わい深い作品である。

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