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柔らかい殻

柔らかい殻

THE REFLECTING SKIN

95

一人旅

5.0

ネタバレ無垢であることが罪なのか

フィリップ・リドリー監督作。 ポスト“デヴィッド・リンチ”と称された英国の鬼才:フィリップ・リドリーの監督デビュー作にして最高傑作で、多感な少年の心の機微を周囲の大人達との対比の中に映し出した異色のジュブナイルドラマとなっています。 1950年代のアメリカ・アイダホ州を舞台に、小麦畑の広がる田舎町で育った8歳の少年:セスを主人公にして、夫を自殺で亡くした悲しみを抱える謎めいた未亡人:ドルフィンが“吸血鬼”であると思い込んだ主人公が、戦地から還ってきた兄:キャメロンをドルフィンから守るため奔走していく様子を描いた不思議な感覚のドラマ映画で、同性愛者である父親の焼身自殺や心を病める母親との歪んだ母子関係、友人を巻き込んだ連続殺人事件といった子ども心にハードな出来事が主人公の少年に短期間のうちに襲い掛かっていきます。 見たもの、聞いたものを素直に信じる純粋無垢な少年の行動がやがて取り返しのつかない悲劇を引き起こしていく様子が不条理な感覚を現出させる異色作で、いくつもの大人達の罪だけでなく、主人公の少年の澱みのない心の“無垢”すらも結果として罪に変貌してしまう結末が悲痛な余韻を残しています。 そして、黄金色の小麦畑が一面に広がる牧歌的で耽美的な自然美&緻密に計算された構図が優れた作品で、映像の極端な美しさが少年の不安と絶望の機微と好対照を成しています。

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